中米に近づいた気球、熱帯性低気圧に遭う2022/04/23 06:59

 気球は順調に飛行して、5日目、アゾレス諸島が見えてくるだろうというあたりで、風がばったりと止んでしまった。 双眼鏡を覗いていたドリトル先生が、救援隊が来てくれたようだ、と言う。 カツオドリの大群、ざっと100羽ほどいる。 リーダー格のラピスが、委細はミヤコドリの連絡網で聞いたといい、ビーグル号は流行のコレラの持ち込みを恐れたためカナリア諸島への寄港を断られたという。 大きな羽と強い胸筋を持つカツオドリたちが、風と出会える地点まで、気球を曳航してくれることになった。 20羽ずつ5チームにわかれて、気球の紐の輪っかを脚にかけ、扇形の編隊を組んで飛ぶと、気球がすーっと動き出した。

 海におりていったカツオドリたちは、プレゼントをくわえてゴンドラに戻ってきた。 タコ、イカ、エビ、トビウオといった海の幸だ。 ドリトル先生は、すばらしく新鮮なごちそうだね、海の生き物たちには申し訳ないけれど、こうやって生命の交換をすること自体が、この世界を回していくことだから、ありがたくいただくことにしよう、と言う。 持ってきていた小型コンロで焼いて美味しく食べた。 ドリトル先生には、海の幸なので、革袋に入れてきたお好きな白ワイン、ピノ・グリージョを供して、喜ばれた。

 カツオドリたちに助けられた後、気球は貿易風に乗って大西洋を渡っていき、ドリトル先生の六分儀での観測では、中央アメリカに接近し、あと4、5日で陸地が見えるところまで来た。 明け方、たくさんの小石が激しくぶつかってくるような大きな音に目を覚ます。 雨だ、大雨が来そうだ。 熱帯性の低気圧で、風はますます強まり、ゴンドラは大きく揺れ出した。 そのときだった。 ものすごい突風が気球にぶつかり、ゴンドラがほとんど横倒しになった。 水をためた重い革袋がいくつかゴンドラから外に飛び出してしまった。 荷物も大揺れ、ドリトル先生とスタビンズくんも一緒に倒れた。

 ドリトル先生に言われて、スタビンズくんはロープを腰に巻きつけて安全ベルトにし、身体をゴンドラの低い場所に固定した。 先生は、少し低い位置を飛ぶように、希ガスを抜くためにバルブの調節をしようと、もう少し立ったまま風の動きを見る、と言った。 それがドリトル先生との最後の会話になった。 この直後、ものすごい大風が気球を吹き上げた。

 スタビンズくんは、自分の身体が一瞬軽くなり、次の瞬間、おそろしい速度で落下していくのがわかった。 そのまま気を失ってしまった。

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