ガラパゴス諸島の歴史と〝天然のいかだ〟仮説2022/04/25 07:10

 スタビンズくんは、ジョージの話を聞く。 ジョージは、ガラパゴスゾウガメなのだが、なぜ南米の国エクアドルにいるのか。 ジョージは、海底火山の噴火から始まるガラパゴス諸島の歴史を語り出した。 溶岩が冷えて固まるのに何百年もかかり、溶岩台地の上に風で運ばれた種が落ち、サボテンやマングローブのようなものから始まり、長い年月を経て、植物が繁茂していった。 植物の葉が溶岩の割れ目に落ちて、それを分解して養分にする微生物が育ち、だんだん土ができてきた。 土ができると、そこに雨水が保持され、植物の栄養になる。 植物は水とわずかなミネラルがあれば、太陽の光と空気中の二酸化炭素を栄養にして有機物(糖やデンプンや植物繊維や油)をつくるようになる。 これで、生命に必要な三大栄養素、たんぱく質、糖、油が生成できる基礎がようやく整った。 地球の誕生のときに起こったことが、もういちどガラパゴスでも再現されたのだ。

 ここで大事なことは、植物も微生物も、自分たちに必要な分だけ栄養分をつくったり、アンモニアを作ったりするのではなく、いつも少しだけ多めに活動して、それを他の生命に分け与えてくれた。 つまり利他性があった。 余裕があるところに利他性が生まれ、利他性が生まれると初めて共生が生まれる。 利他性は、巡り巡ってまた自分のところに戻ってくるのだ。

 それゆえに、植物が増えてくると、その植物をエサにする生物が棲めるになった。 葉っぱを食べる虫や、花や実を食べる鳥の活動が、花粉や種を運んで、植物の生息域を広げる。 こうして生命活動の土台がなんとかでき上がった後に、ガラパゴスゾウガメの祖先がやってきた。

 学者たちがガラパゴス諸島の生態について唱えているのは、〝天然のいかだ〟仮説である。 ガラパゴスのゾウガメやトカゲやイグアナの祖先が、この島に到達したのはものすごい偶然の産物だというのだ。 南米大陸にいる祖先のリクガメは、せいぜい30センチほどの大きさで、やわらかい土を掘って、いくつかの卵を産む。 太平洋をのぞむ海辺で大嵐があり、土砂崩れで卵の穴をふくむ土もろとも海に流されてしまった。 波と風にもまれるうちに、海藻やつるが木の枝にからみつき、そこに丸太や木材が巻き込まれ、天然のいかだができた。 カメの卵が孵るのに、2、3か月かかる。 南米大陸の岸辺から、ガラパゴス諸島に向かって、絶えず南赤道海流が流れている。 海流は2週間ほどで、1千キロの海を渡って、〝天然のいかだ〟をガラパゴス諸島にまで運ぶことができる。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック