グアヤキルの街で、先立つものを稼ぐ2022/04/29 07:10

 ドリトル先生を甲羅の上に乗せたゾウガメのジョージと、オウムのポリネシアを肩に乗せたスタビンズくんの、奇妙な一行は、森林を抜け草原に出、一軒の農家に着く。 驚く親父さんに、ドリトル先生はスペイン語で丁寧に挨拶し、なぜここに来たのかの経過を説明した。 子どもたちが大きなゾウガメを見てたいそう喜んだこともあり、家の中に入れてくれ、温かいリゾットのような料理をご馳走してくれた。 ドリトル先生がゾウガメから鳥語で話を聞いたというのを疑う親父さんに、この農家のニワトリやブタや馬の要望を聞いて、伝えた。 ニワトリは卵をたくさん産むための殻の材料、カルシウムを求め、ブタは小屋の風通しがいまいちで、いつも地面がジメジメしていると言う。 馬は右の奥歯が痛むというけれど治療の道具がないので、馬を借りて町に連れていき、治療して返すことを提案する。 ゾウガメを乗せるリヤカーも借り、帰りには親父さんが必要な町の品物をいっぱい積んで戻す、と。 馬は高価なので、親父さんがドリトル先生を信用しきれないため、馬に質問し馬に答えてもらうことにする。 NOなら右の蹄をトン、YESならトントン。 ドリトル先生は信用できないか? トン。 町へ行って治療してもらい、ここまでちゃんと帰って来ると約束するか? トントン。

 エクアドルの商都グアヤキルのスペイン風の陽気でカラフルな街に着き、西の少し寂れたところの、人目につかない、しかも1階の、離れのある宿屋が見つかった。 宿屋の人は、ドリトル先生の英国紳士の服装を見て、お代は出発する時でいいと言った。 一行は遭難で一文無し、ポリネシアが、とにかく何をするにも種銭、先立つもの、事業資金が必要だという。

 スタビンズくんとポリネシアが考えて、繁華街からちょっと裏に入った店を借り、「伝説の希少生物! 百歳のガラパゴスゾウガメのジョージ。ひと目みて、甲羅をなでると、あなたも健康長寿が約束されます。お代、ひとり10ペソ。バナナ5ペソ。」という看板を出す。 大家さんには家賃を前払いしない代わりに、もっとも利益のある一番最初のお客さんになってもらった。 これで百歳まで元気に生きられると喜んだ大家さんが、近所に噂を広め、街中の人たちが、ひと目、百歳の長寿ガメ、ジョージを見よう、そのご利益を授かろうと、続々とやってきた。 ジョージの目の前のお盆の上にはたちまちバナナの山ができ、それをこっそり回収して店の前のカゴに戻す、無限循環商売だ。

 あっという間にお金がたまり、それで宿代、店の家賃、その他の払いを済ませ、ドリトル先生に歯を治してもらった馬は、リヤカーにお土産品を満載して森の近くの農家に帰っていった。

 足が治って自由に歩き回れるになったドリトル先生が言う。 こうして街中にゾウガメの長寿館の噂が広まれば、我々が会いたいと思っている人物も、きっとそのうち、ここに姿を現わすだろう。