国連を解体し、世界連邦へ<等々力短信 第1154号 2022(令和4).4.25.>2022/04/11 06:58

ウクライナのゼレンスキー大統領は、4月5日、国連安全保障理事会でオンライン演説を行った。 「ロシア軍は我々の国に奉仕した人びとを探し出し、意図的に殺している」と、首都近郊のブチャの惨状を語りつつ、「第二次世界大戦以来、最も凶悪な戦争犯罪」とロシア軍を非難した。 ブチャでの「大虐殺」は「多くの事例の一つにすぎない。世界が全容を知らない都市がまだたくさんある」とも語った。 そして「われわれが相手にしているのは、安保理の拒否権を、死なせる権利に変えようとしている国家だ」と指摘し、常任理事国としてのロシアの拒否権を問題視した。 安全保障理事会の会合は1月末以来、5日で15回目だが、法的拘束力のある安保理決議は一つも採択できていない。 ゼレンスキー氏は、同じことが繰り返されないようにするために「ロシア軍、彼らに命令を下した者たちを、戦争犯罪として裁くこと」が重要だと訴えた。 そして安保理や国連について、「このままでは、各国が自国の安全を確保するために、国際法や国際機関ではなく、武器の力だけに頼るという結末が待っている」と語った。 「安保理が保証せねばならない安全保障はどこにある。安保理は存在しても、何事もなかったかのようだ。国連の創設目的だった平和はどこだ。」と指摘、「国連を解体する覚悟はあるか。国際法の時代は終わったと考えているのか」と問いかけ、「答えが『ノー』なら、すぐに行動する必要がある」とし、例外や特権なく、平和の力が支配的になるような安全保障システム作りをする必要性を訴えた。 そして最後にこう述べた、「我々には平和が必要だ。ウクライナ、欧州、世界に平和が必要だ。」

 もし化学兵器が使われた場合、ウクライナ国民を保護する責任があるとして、NATO側が通常兵器での介入に踏み切る可能性がある。 核兵器が使われれば、NATO側の介入はさらに大規模になり、いずれは米国も軍を派遣し、核使用の可能性もある第三次世界大戦になるだろう。 そうした危機感からG20首脳とグテーレス国連事務総長は、密かにジュネーブに集まり、人類の破滅を防ぐため重大な決断をした。 ゼレンスキー大統領の国連安全保障理事会での演説を、現実のものにすることを決めたのだ。

国連を解体し、国際法に準拠した世界連邦憲法を持つ世界連邦を創設する。 憲法は、「世界人民は、正義と秩序を基調とする世界平和を誠実に希求し、戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、永久に放棄する。核兵器はもちろん兵器は全て廃棄する」と定めた。 ゼレンスキー氏を世界連邦大統領とし、副大統領にはメルケル氏、アメリカ州知事はバイデン氏、ロシア州知事はご老体ながらゴルバチョフ氏、日本州知事は岸田文雄氏。 平和のことならば、エープリルフールは4月中有効としよう。

高校の「探究学習」、福沢の実学2022/04/11 07:00

 来春以降の新学習指導要領の実施で、高校2、3年生の国語や地理歴史などの科目の再編があり、深く掘り下げて学ぶ「探究」がつく科目が新設された。 「日本史探究」「世界史探究」「地理探究」など。 「探究学習」、高校生がみずから課題を見つけ、調べ、考え、その結果をリポートなどにまとめる経験を通して、思考力や判断力、表現力を養うことをめざす、という。 教科書の内容を、講義で一方通行で伝えられるよりも、どれだけ興味がわくか、容易に想像できる。

 そこで連想するのは、今までしばしば触れてきた、福沢の実学と、小尾恵一郎ゼミで教わった学問の方法だ。 福沢は、学問(実学=実証科学(サイヤンス))で身につけた個人の独立を、活発なコミュニケーションによる「人間交際」(Societyをこう訳した)を通じて、国の独立に結びつけることを説いた。 言いかえれば、自分たちで考えて動かす本当の「市民社会」をつくれるかどうかが、日本の行く末を握る鍵になるということだろうか。

福沢が説いた自分の頭で考える実学、小尾恵一郎ゼミで教わった学問の方法は、自然科学のみならず、社会・人文科学を含めた実証科学のことだった。 福沢は明治16(1883)年の「慶應義塾紀事」の中で、「実学」に「サイヤンス」とルビをふっている。 『文明論之概略』などは、徹底的な実証精神の表れた、「実学」の事例のオンパレードだ。 「スタチスチク」という言葉を使い、例えば殺人犯や自殺者の数が年々ほぼ同数になることや、結婚と穀物の値段に負の相関関係があるという実証分析に言及している。 自分の頭で考えるということには、四つの要素がある。 問題発見、(オリジナルな)仮説構築、仮説検証(誰もが納得するように、科学の作法で)、結論説明(解決策を示す)。 実践によって検証を繰り返し、その都度修正を加え、より良き方法を求め、システマティックに問題解決の筋道を考えるものだ。 その時、公智(物事の軽重大小を正しく判断し、優先順位を決める。『文明論之概略』第6章「智徳の弁」)をしっかり働かせる。

「探究学習」、準備はなかなか大変そう2022/04/12 06:59

 高校の「探究学習」、たいへん素晴らしいのだけれど、もちろん問題点もあることが考えられる。 新学習指導要領は「脱ゆとり」の流れを引き継ぎ、修得させる知識の量は変えていないのだそうだ。 現在の教科書でも最後のページまで教えきるのは難しいのに(昔からそうで、「日本史」は明治時代まで来なかったか)、さらに新たな課題、それも時間のかかりそうなものに取り組めるだろうか。 先生方の準備、研修を受けたり、授業の組み立てを考えたりする手間と労力も、かなりの負担になるだろう。 大学側の入学試験問題には、どういう影響があるのか。 例えば「歴史」科目では、従来の「重要な出来事の暗記」というイメージがくつがえされることになる。 受験生は、従来の準備と異なった準備が必要になるだろう。

 「探究学習」という理想は素晴らしいのだけれど、実践に結びつかなければ意味がない。 そのための環境をどう整え、生徒の力を引き出すことができるか。 来春まで、一年を切って、やらなければならないことは、たくさんあるだろう。

 先日、来春以降に使われる高校教科書の検定結果が公表された。 それは明日みてみたい。

必修「歴史総合」から「日本史探究」「世界史探究」に進む2022/04/13 06:54

 高校で、今年4月から「歴史総合」という新科目が必修になった。 これまで世界史と日本史に分かれていた歴史科目を、18世紀以降の近現代史として「総合」した形で学ぶことになった。 「歴史総合」を必修科目として学んだ後、選択科目の「日本史探究」「世界史探究」に進むことになる。 「歴史総合」の教科書の記述は、テーマ史の形で3編、「近代化と私たち」「国際秩序の変化や大衆化と私たち」「グローバル化と私たち」となっていて、これまでの日本史の教科書のような一国だけの歴史(ナショナルヒストリー)ではない、日本と世界をグローバルヒストリーとして学ぶことに主眼があるという。

 そこで、選択科目の「日本史探究」「世界史探究」の教科書の検定結果である。 朝日新聞が、3月30日の朝刊で伝えた。 「日本史探究」は、「歴史総合」で近現代史を履修したうえで、古代から現代までの通史を学ぶ。 さまざまな事象を多面的・多角的に考察し、現代の諸課題について探求する力の育成をめざす。 これまでの「日本史B」に比べ、自ら問いを立てたり多様な資料を活用して考えたりする、主体的な学びが重視される。 5社の7点が合格した。

 「世界史探究」は、これまでの「世界史B」が基盤だが、詳細で専門的な知識の習得ではなく、世界の歴史の大きな枠組みと展開について、理解を深めて考察し、「地球世界の課題と展望」を探求する力を養うことを狙いとしている。 5社の7点が合格した各社の教科書には、回想や日記など文字による記録のほか、地図、年表、グラフ、絵画や風刺画、写真といった多くの資料が掲載され、「問い」もふんだんにちりばめられているという。

ところで、もし必修科目「歴史総合」から選択科目「日本史探究」へ進まないとすると、古代から近代以前までの歴史は、まったく学ばないということか。 何か、とても奇妙な感じがする。

『カムカムエヴリバディ』の森山良子2022/04/14 07:03

Come come everybody.
How do you do, and how are you?
Won’t you have some candy?
One and two and three, four, five.
Let’s all sing a happy song.
Sing trala la la la.

Good-bye, everybody.
Good night until tomorrow.
Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday,
Friday, Saturday, Sunday.
Let’s all come and meet again.
Sing trala la la la.

 朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(作・藤本有紀)が8日で最終回となった。
日本でラジオ放送が始まった大正14(1925)年から2025年までの100年、大正14年生まれの「安子(やすこ)」(上白石萌音)、昭和19(1944)年生まれの「るい」(深津絵里)、昭和40(1965)年生まれの「ひなた」(川栄李奈)、ヒロイン三代の物語だった。

 進駐軍の中尉ロバート・ローズウッドとアメリカへ渡った雉真(きじま)安子が、ハリウッド映画のキャスティング・デイレクター、アニー・ヒラカワ(森山良子)になるとは、まったく意外な大団円だった。 「アニー」は、御菓子屋の安子を同級生でのちに義弟となった勇が「あんこ」と呼び、「ヒラカワ」は、カムカム英語の平川唯一に由来していた。  アニー・ヒラカワ役を森山良子にしたのは、主題歌「アルデバラン」を作詞・作曲したのが、森山直太朗だったからなのだろうか。

 アニー・ヒラカワを演じた森山良子は、かなり複雑な心境だったのではないかと思われる。 2016年2月5日放送の、森山良子の「ファミリーヒストリー」~日系二世の父、二つの祖国のはざまで~を見ていたからだ。