小泉武夫さんの「伝統食、発酵と東北人の知恵」2022/05/31 07:06

 発酵で思い出したのが、27日に書いた岸由二さんの「流域で考える・東日本大震災からの復興」と同じ2012年秋に日吉キャンパス公開講座「日本ってなんだろう―東北の魅力再発見」で聴いた、醸造学、発酵学、食文化論の小泉武夫東京農業大学名誉教授の「伝統食の宝庫・東北の底力―発酵と東北人の知恵」だった。 (当日記の、2012年11月24日と、25日〔漬物文化〕〔灰の文化〕「大豆」の力、に書いていた。) 24日の、「小泉武夫さんの「伝統食、発酵と東北人の知恵」」から、一部を再掲する。

 古代から、東北の農耕文化とそれに伴う食糧の自給は決して豊かなものではなかった。 冬の日本海側の豪雪、夏の太平洋側での冷涼な山背(やませ)の発生、たび重なる冷害などで、食糧自給の不安定が貧困の大きな原因となってきた。 そのような気候風土を宿命として、東北の人達の食生活では、絶えず知恵を絞り出し、工夫を重ねる必要があった。 その結果、東北独自の食文化が作り上げられた。 その一例が、気候風土と土着食材を利用した一大発酵食文化の成立で、中でもおびただしい漬物文化、麹食文化、大豆発酵食品の多様性、魚介類の発酵による保存と調味料の製造などである。

 小泉武夫さんが、東北人が発酵を応用した知恵の中でも最たるものと紹介したのが、「アケビのナレズシ」だ。 『いのちをはぐくむ農と食』(岩波ジュニア新書)に詳しいが、秋田の山の中と青森の一部にあり、ご飯を、山ブドウを絞り種だけ取り出したジュースに練り込み、アケビの皮に詰め込む。 漬け樽に重ね、笹の葉をのせ、布をかけ、落し蓋をして重石をする。 一か月半で発酵する。 山ブドウの酸味で腐らない、特筆すべきは無塩発酵であり、全部植物でつくられていることだ。 甘酸っぱく、美味しくて、保存がきく、皮はシャリシャリ・カリカリ・シコシコの漬物になる。 すごい力があり、一個食べると、一日に必要なビタミンの三倍ぐらいが入っている、乳酸菌がビタミンをつくるからだ。

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