『図書』表紙、杉本博司さんの「portraits/ポートレート」2022/06/09 07:07

 エリザベス女王の「プラチナ・ジュビリー」について書いたのは、実はマクラで、これから紹介することを書きたかったからだ。 岩波書店の『図書』が1月号から表紙に使っている杉本博司さんの「portraits/ポートレート」である。 現代美術作家という肩書の杉本博司さんは、虚実の関係を鮮烈な手法であぶり出す写真作品で世界的に活躍している方だそうだ。

 幕末期、Photographという技術を「写真」と訳した初出は柳河春三の「写真鏡図説」と思われると説明したあと、杉本博司さんは、「私はこの写真術を操る技術者として、真を写すとは如何なることかを探求してきた。真は手強い。迂闊に手を出すと深傷を負う。私は真を炙り出すために虚を使うという手法を編み出すことにした。虚の向こう側にこそ真は垣間見えるはずだ。」という。

「portraits/ポートレート」シリーズは2年間、24回の予定、第1回の1月号は、文学界のレジェンド、ウィリアム「シェイクスピア」。 禿げ上がった頭に、薄い口髭と顎髭、険しい顔で睨みつけている。 杉本さん訳、『マクベス』よりの、言の葉が付されている。 「無心の花と見せかけて、そこに潜む蛇におなりなさい」