三遊亭わん丈の「魚の狂句」2022/10/04 07:10

 三遊亭わん丈は初めてだ。 朱色というのか、派手な着物と羽織。 去年の11月に死んだ円丈の弟子だが、落語家は師匠につかないとやっていられない。三遊亭天どんの弟子になって、落語を続けられることになった、という。 円丈は、犬がツーーッと通ったので、わん丈と付けたのだが、天どんの弟子になったので「わんどん」かと思ったら、わん丈のままでいいと言ってくれた。

 「魚(うお)の狂句」は5分の噺だが、持ち時間は15分、5分を三回やると、お客様に「三遍稽古」をつけてるようになるか。 もともとは米朝師匠が発掘したという上方の噺で、私の別の噺を聴いた落語作家の和田尚久さんが、よかったらやってみないかというので、上方の桂春蝶さんに稽古をつけてもらった。 それで大阪新町の噺だが、江戸の吉原に移している。

 可愛いなと思って、家庭を持つと、女の人は「可愛い」が「怖い」になる。 迷彩色のズボン、それも1万円ほどのを買って、家に帰った。 玄関で、ふと思い直して、クローゼットにしまった。 4、5年前は、帰ると玄関で待っていた、待っていればいいなと心の中で思ったのは2年ぐらい前で、今は100%、ない。 出かけたら、すぐにクローゼットの迷彩色のズボンを見つけた。 何よ、これ! 迷彩のくせに、そんなに早く見つかるな。 今は、ズボンに腹が立っている。

 吉原へ行こう! 吉原へ行こう! なんべんも言うな、聞こえるだろ。 カミさんが、包丁を研ぎ出したじゃないか。 行かないよ、愛する妻がいるからな。 (外へ出て、)わかんないように、誘え。 川柳で伝えろ。 吉原は魚なら鯛だ、魚を詠み込んだ川柳で。

 潮(うしお)煮や鯛の風味も値も高し
 新宿は? 鯛よりはその勢いは初鰹
お前も、池袋でやってみろ。 さあ行こう女郎買いに池袋
 だめだ、だめだ、こうやるんだ。
 ぼられてもなおその年増くどきゆく
 豊島区を入れたな。 胃袋に毛が生えたけど池袋
 渋谷は? 触られて109で110番

魚を入れろ。 年増の女で。 恋じゃないこのドキドキは不整脈
 胸の大きな女で? いつの日か言わしてみたいサーモンで
 ぽちゃぽちゃっとしたので? 頬赤め鮪を落とすすしざんまい

カミさんが包丁を研ぎ終わった。 かえって、カミさんの神経を、逆撫でしたみたいだ。