牧場の奥さんは真情を吐露した2022/10/19 07:05

 妹の加奈は、耕作がずっと民子に思いを寄せていたことを知っていて、なぜ出所の連絡をしないのかと、詰問するのだった。

 音楽教師の西川(藤井隆)は自分の車で4時間かけ、武志を札幌のピアノコンサートに連れていく。 札幌で、武志が交通誘導の警備員をしている耕作を見つける。 武志は、耕作にコンサートに来てくれと言う。 耕作は約束を守り、ホールで演奏に昂奮した武志が倒れるのを目撃、西川の車を運転して病院へ向かうが、武志は中標津に帰りたいと言い出す。 武志が寝て、民子がうどんを用意し、お茶を淹れている間に、ようやく西川に呼ばれた耕作が席につく。 「あなた…」「おひさしぶりです」、西川が武志に耕作が以前ここにいたと聞いたというと、「ずいぶん昔のことですから、もう、お忘れかと」「いいえ、ちゃんと覚えています。さあ、どうぞ、おうどん」。

 西川が、明日、標茶から札幌に帰るという耕作と西川の住いに帰ろうとする。 「先生、この方、ウチに泊まってもらいます。あの小屋に泊まってもらいます。いいでしょう、森山さん?」「奥さんさえ、よければ」

 小屋に耕作のベッドを用意した民子。 「耕作さん、どうして出所した時、知らせてくれなかったの。五年前、私たちとまるで家族のように暮らしたじゃない。忘れたんじゃないでしょ」「すみませんでした」「謝ってほしいんじゃないの。訳があったら言ってほしいの。何度も手紙を出したでしょ」「四回もらいました。もちろん、よく覚えていますよ。何が書いてあったのかも、一字一句。ペンで書かれた、きれいな字の形まで覚えています」「だったら、どうして、返事を書いてくれなかったの。たった一言でもいい」「返事なんか書いちゃいけないと思ったんです。俺は同情されているんだ。奥さんは、俺が可哀そうで、優しい言葉を書いてくれているんだ。そんな気持に甘えちゃあいけない。連絡したら、返事なんかしたら、かえって奥さんに迷惑なんだ。返事なんか書いちゃいけない。ここは俺の事なんか忘れてもらうしかない。それが一番いいんだと考えたんです」「そんなこと、どうして自分一人で決めてしまうの。私の事がわかっている積もりなの」「いや、俺は…」「私がどんな気持であの手紙を書いて、どんな気持でこの数年過してきたか、わかるって言うの。自分勝手な人ね、あなたは。……おやすみなさい」