NHKスペシャル「新・幕末史 グローバル・ヒストリー」 ― 2022/11/09 07:12
NHKスペシャル「新・幕末史 グローバル・ヒストリー」の第一集、第二集を見た(10月16日、23日放送)。 必修「歴史総合」から「日本史探究」「世界史探究」に進む<小人閑居日記 2022.4.13.>に書いたように、高校では今年度から「歴史総合」を必修科目として学んだ後、選択科目の「日本史探究」「世界史探究」に進むことになる。 「歴史総合」の教科書の記述は、テーマ史の形で3編、「近代化と私たち」「国際秩序の変化や大衆化と私たち」「グローバル化と私たち」となっていて、これまでの日本史の教科書のような一国だけの歴史(ナショナルヒストリー)ではない、日本と世界をグローバルヒストリーとして学ぶことに主眼がある。 このNHKスペシャルは、その観点から、幕末史を当時の世界情勢の中で、捉えなおしたものだ。
幕末史に西洋列強の大きな影響があったことは、私の学生時代から1960(昭和35)年のアーネスト・サトウ(坂田精一訳)『一外交官の見た明治維新』上下(岩波文庫)や、1975(昭和50)年の石井孝さんの『明治維新の舞台裏』第二版(岩波新書)を皮切りに、目を見開かせられ、その後の福沢研究に関連しても、いろいろ知ってきたところであった。
今回の番組は、米、英、独、蘭の公文書館や大学図書館などで、各国の外交官や軍人の報告書や書翰など機密文書を取材して、産業革命が起こり、蒸気船が世界を駆け巡ることになったこの時代、列強がその軍事、経済、外交で日本を重要な場所と考えていたことを浮かび上がらせる。 1853(嘉永6)年のペリー黒船来航、1858(安政5)年の米、英、仏、露、蘭と通商条約が、開国か攘夷か、国内の争いを激化させ、そこにつけこむ列強、日本は世界の渦に巻き込まれる。
第一集は「幕府vs.列強 全面戦争の危機」。 イギリス、大英帝国は、世界の1/4の地域を支配下にし、「日本は植民地と同様に重要」と考えていた。 1840(天保11)年のアヘン戦争で、巨大市場・中国の権益を獲得、その中国市場を確保するために重要だったのが制海権。 横浜に艦隊を駐留させようと考えていた。 「日本は中国市場を保護する盾になる」(1860(万延元)年イギリス外務省機密文書)
1861(文久元)年の英外務省の機密文書、ロシアの脅威をラッセル外相に報告。 1854(安政元)年にクリミア戦争に破れたロシアは、この時、極東への進出をもくろみ、ニコラエヴィチ海軍大臣とアレクサンドロ2世は対馬に拠点をつくることを計画した。 対馬は、ロシアが中国へ向かうルート上にあり、地政学上の重要拠点だった。 1861年2月、ロシアは軍艦を対馬へ送り、修理を名目に停泊は半年に及んだ。 実は、その間、司令部、砲台、見張り台などの軍事施設を建設し、対馬を支配しようとしていたのだ。 (ロシア軍艦対馬占拠事件、ポサドニック号(艦長ニコライ・ビリリョフ)事件として知られる。)
ロシア軍艦の対馬占拠に対して、外国奉行の小栗忠順が立ち向かい、退去を要求したが、ロシアは英国が対馬を狙っているので、それを防いでいると主張した。 小栗は、対馬を幕府の直轄領にし、対馬を開港することを考えたが、老中・安藤信正はその策を採用せず、英国に頼る。 幕府の同意を得た英国は、軍艦を対馬に派遣し、ロシア艦を退去させる。 幕府は危機を脱出することができたが、英国は日本への干渉を強めることになる。
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