遠山記念館で「雛の世界」展を見る2023/03/17 07:10

 3月5日は、第553回三田あるこう会例会で、埼玉県比企郡川島町(かわじままち)にある遠山記念館へ行った。 遠山記念館は、日興証券(現・SMBC日興証券)の創立者・遠山元一(明治23(1890)年-昭和47(1972)年)が、幼い頃に没落した生家を再興し、苦労した母・美以のために建てた伝統的日本建築の遠山邸(平成30(2018)年国指定重要文化財)と、長年にわたって蒐集した美術品を公開している美術館とから成っている。

 例によって10時30分、JR高崎線の桶川駅集合。 私は渋谷から埼京線で赤羽まで行き、同じホームから出る宇都宮線を二本見送って高崎線に乗ったが、宇都宮線に乗ってしまって、気付いた駅からタクシーで駆けつけた人もいた。 桶川駅は初めて降りた。 西口から1時間に1本とかの川越駅行きの東武バスで、牛ケ谷戸バス停まで行く(タクシーの人と合流)。 遠山記念館までは約1.3キロ、15分ほどの歩行だった。 東京の街中で暮らしている所為だろう、桶川の周辺は、まったくの車社会だということが見てわかった。

 美術館では、開催中の「雛の世界」展、「桃のパラダイス 雛×呉春」を見た。 会員の川内由美子さんが極小雛道具の蒐集研究家なので、彼女の説明を聞きながら鑑賞することが出来た。 立雛(次郎左衛門頭)は、静嘉堂文庫美術館のものより高さが低かった。 享保雛、古今雛のほか、近代の名工といわれる久保佐四郎(「芥子雛(けしびな・極小雛人形)御殿飾り」)、三代 永徳斎、渡辺省亭などの雛人形、嵯峨人形、御所人形、「狐の嫁入り」などの賀茂人形、能舞台「竹生島」の衣装人形、三つ折れ人形や抱き人形(静嘉堂で見た市松人形の類か)、からくり人形、「犬・兎」の絹糸細工などもあった。 からくり人形に「笛吹き太鼓打ち」のほか、「諫鼓鶏(かんこどり)」というのがあったが、静嘉堂の雛道具の内の楽器「鞨鼓(かっこ)」を右手の扇子で打つ形だった。 「かんこ鳥が鳴く」を辞書でみるとカッコウドリの訛か、とあり「閑古鳥」は当て字だとあるが、「諫鼓鶏」はなかった。

 また、桃の節句に因んで、江戸中期の絵師、呉春(宝暦2(1752)年-文化8(1811)年)の長さ6メートルにわたる≪武陵桃源図巻≫(重要美術品)全場面が一挙展示されていた。 呉春と「武陵桃源」については、以前いろいろ書いたので、あらためて紹介したい。

 そして伝統的日本建築の遠山邸である。 長屋門、渡り廊下でつながる東棟、中棟、西棟で構成されていて、室岡惣七の設計、全国各地の銘木と選りすぐられた技術によって、2年7か月を費やして昭和11(1936)年に完成したという。 母・美以の没後は、遠山元一の接客に使用された。 表玄関のある東棟は茅葺屋根の豪農風建築だ。 中棟の中心となる18畳の大広間は書院造りの正式な応接空間で、遠山元一が長女貞子の初節句の祝いに揃えた七段の雛段飾りが展示されていた。 非公開の中棟二階は、洋風の応接間を含む昭和初期の和洋折衷だそうだ。 西棟は、茶室建築の意匠を取り込んだ数寄屋造りで、美以の居室である12畳間を中心に二つの座敷と広間がある。

 遠山邸、庭の石や木も素晴らしかった。 遠山記念館、こういう機会でもなければ行かない場所で、良い所に案内してもらったと思った。