五島地鶏“しまさざなみ”を食べる2023/06/13 07:00

 資生堂パーラーの5階、2時間の約束だが、パンが出て来るまでもだいぶ時間がかかったので、吹き抜けから4階を覗くと、インバウンドに日曜日でもあり、ごった返している。 まだ前菜が終わったところだ。 スープは、「“椿やさい”のミックスポタージュ」、ウェイトレスが「大根」と言ったが、なるほど大根の香りがした。

 そこで、メインの肉料理、「五島地鶏“しまさざなみ”フォアグラを詰めたモモ肉のソテー」である。 フォアグラを詰めたモモ肉の周りを鶏皮の脂身で巻いた、巻き鮨のようなものを、いくつか輪切りにしてある。 がっちりと食べ応えがあり、とても美味しく、満足した。

「五島地鶏“しまさざなみ”」を調べる。 五島列島は、対馬暖流の影響を受けた、海洋性気候。 年間の平均気温は17度で、海に面しているため、冬は比較的暖かく、夏も過ごしやすい。 五島地鶏は、軍鶏(しゃも)の雄とプリマスロックの雌を交配させた地鶏で、うまみの強さとくせのなさ、両方のいいとこ取りをしているという。 地鶏にはJAS(日本農林水産規格)によって定められた厳しい基準がある。 在来種の血液比率が50%以上で、出生の証明ができ、75日以上の飼育期間、28日齢以降平飼い、28日齢以降1平方メートル当たり10羽以下の飼育密度。

 五島地鶏を飼育している農家は、エサや物流経費の高騰、後継者がいなかったりで、五島さざなみ農園(庄司鉄平さん)が最後の一軒になってしまったそうだ。 農園は、福江島の鬼岳(おにだけ)と翁頭山(おうとうさん)の二つの山にはさまれた自然豊かな里にある。 五島地鶏“しまさざなみ”は、専用の基礎飼料と五島の自然豊かな里でとれた「椿油」や「お茶」などを自家配合してエサにしている。 食べるものが、肉のおいしさをつくると考えれば、良質な飼料にこだわったエサを食べた五島地鶏ほど、「五島のおいしさ」を体現した肉はきっとほかになく、一羽一羽に、五島という島がつまっている、という。

 五島地鶏“しまさざなみ”の雄鳥は、黒と白の羽が交互に重なり合う、波のような模様を持つ。 それはまさに、五島の美しい砂浜に見られる「さざなみ」のようだ。 福江島は、山と里と海が織りなすバランスが、島全体を豊かにしている。 この豊かな「島の自然」をまるごと活かして育てることが農園の誇りであり、「しま」+「さざなみ」で「しまさざなみ」と名づけたのだそうだ。