見方、考え方を変えると、バラ色の景色になる2023/06/20 06:57

 大塚宣夫さんの「いくつまで生きますか?」、2月号では、人生における80歳とはどんな立ち位置かと考える。 75歳を過ぎると後期高齢者という区分に分類される。 75歳という数字はそれなりの根拠があり、体の中の各臓器の耐用年数が過ぎるがゆえに、いろいろなことが起こり始める。 筋力が落ち、体のバランスが崩れ、手や足の感覚がずれ、それに視力障害が加わったりするため、転倒や転落など、生活上の事故が急激に増える。 加えて、加齢とともに脳梗塞や心疾患、悪性腫瘍の発生率も上昇する。

 75歳を超えるあたりから世代交代の圧力が強まり、老害呼ばわりされかねない。 それに抗して生涯現役を目指すか、あるいはこれを機に新しい生き方を模索するか、決断のしどころかもしれない。 大塚さんは、振り返ってみると、若い頃からいつも周囲の期待を背に、世間並み、あるいはそれよりも上を意識しながら走り続けてきた気がする、という。

 しかし、今や周囲の期待に応えなくていいとなると……。 今から受験勉強しなくていい、子育てしなくていい、家族を支えなくていい、嫌な仕事をしなくていい。 ちょっと数え上げただけでも、気分は上向きになることばかり、嫌いなことはしなくてもいいのだ。 それを前提に、この先の生活を考えればよいとなると、結構ワクワクしないだろうか。 考え方、見方をちょっと変えるだけで、景色はこんなにも一気に変わるのだ、という。

 3月号。 この時期、身体能力も、精神的能力も、ピーク時から見れば明らかに劣っており、この先さらに衰えていく途上にあることも、厳しい現実だ。 だが、これも別の見方をすれば、能力的には今日が一番の高みにあるということになる。 やりたいことがあるなら、一年後はおろか、一か月後にできるとは限らないので、今すぐ始めなければ間に合わなくなる。

 周囲からの期待や圧力もなく、自分の好きなように過ごしていれば、そのうちゴールに到達、これを人生の黄金期と言わずして何というのだろうか。 この黄金期のスタートに当たり、何から始めようか。 ここ十年来、世の中は「断捨離」ブームだが、身の回りに残っている品には、思い出と愛着が詰まっていて、それを捨てるとなると大変な決断の連続で、その実行には多大な精神的エネルギーを必要とする。 残された気力と時間の少ない高齢者がやらなくても、当の本人がいなくなった後、その品に愛着のない人がやれば、一瞬にしてまとめて捨てておしまいといった代物だから、それに任せるに限る。

 大塚さんが、手始めにやろうとしている断捨離は、「物捨て」でなく、今までいろいろなしがらみの中で、嫌々ながらやってきたことから、自分を解放する断捨離だという。 具体的には、(1)不得手なこと、やりたくないことをやめること。(2)嫌な人とは付き合わないこと。(3)義理を欠くこと。 たったこれだけで毎日は何と豊かになることか、この先の人生、ますますバラ色に見えてくる、という。