桂宮治の「道灌」 ― 2023/08/02 06:57
宮治は草色の着物に濃緑の羽織、唯一の芸協で、と。 昨日、隣の国立演芸場で他局の大喜利の番組の収録があったが、この会とは、お客も、スタッフも、雰囲気も180度違った。
横丁のデコボコ隠居のとこで、不味い茶の一杯も飲んで、半日とぐろを巻くか。 何だい。 汚え湯呑、くさい、不味い茶、旨いね。 羊羹を切ってやれ。 頼むよ、婆さん、厚く切って。 甘いものも好き、きんつば三十あったのを、二つ残した。 羊羹、旨い、旨い、ブゥブゥブゥ! 豚か。
町内で隠居さんの噂、何もせずにいい暮し、ことによるとベロベロじゃないかってね。 ハッキリ、言え。 泥棒。 俺は違う、あやつは強盗だって。 ひどいな、一人の娘がある、そこから分米(ぶんまい)が来る。 月々、トントン分米ですってな、それでオシ米だ。
じゃあ、退屈でしょう。 退屈ではない、趣味道楽がある。 書画骨董だ。 生姜に納豆で? 狩装束の侍に、娘がライスカレーを差し出している絵は、何です。 山吹の絵だな。 太田道灌が狩座(かりくら・野駆け)に行き、にわかの村雨に、あばら家に傘を借りに行く。 十六、七の賎の女(しずのめ)が、山吹の枝を差し出した。 賎の女? 魚の目が痛い。 道灌がわからずにいると、家来の中村勘解由(かげゆ)という者が、兼明親王(かねあきらしんのう)のお歌<七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき>を教えた。 蓑と、実の、をかけた断わりだと。 道灌は、余もまだ歌道に暗いな、と嘆いた。 歌道? 鉄道、水道、面胴。 ご帰城になって、後に歌詠みになられた。 どこの城で? 千代田のお城だ、昔は道灌の城だった。 後に徳川さんが安く買った。 だから、分かり易くいえば……、これから面白いことを言います(と、さんざん引っ張って)。 徳川、家康……、誰もわからない。 ウチにも道灌野郎が来る。 傘を借りに来た時の、断りの歌、書いて下さい。 また、来ます、失礼します。
ただいま、帰りました。 雨が降ってきた。 あいつ、傘持ってるし、合羽も着てる。 深川へ行くんで、借り物があって来た、提灯を貸してくれ。 ない。 後ろにあるじゃねえか。 あっても、ない、<七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき>だ。 聞いたことのねえ、都々逸だな。 都々逸? おめえ、歌道に暗いな。 ああ、角が暗えから、提灯借りに来た。
桂宮治の前座噺、雰囲気に呑まれたのか、面白くなかった。
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