先輩方の合同句集『風花』を読む2023/08/08 07:00

 俳誌『夏潮』の誌友で、昭和3年生れという大先輩岩本桂子さんと四人のお仲間が合同句集『風花』を上梓され、ご恵贈いただいたのだが、怠慢で失礼にもお礼状も出さずにいた。 昭和11年生れ、昭和13年生れがお二人と、年下は戦後生れのお一人だけで、ほとんど先輩ばかりである。 拝読したので、感じるところのあった句を挙げてみたい。

  岩本桂子さん
春愁や飽くほど生きて厭きもせず
九十年変わらぬものに花の散る
老いて尚何かあるごと春を待つ
いそいそといふことのあり春ショール

  石山美和子さん
ディンギーの覚束なくも風つかみ
巡業の明荷の上の大団扇
撫子は傘寿の今日の誕生花

  津田祥子さん
海山のあはひの町へ虎が雨
見開きの絵本のやうや夏の海
さうめん流し時々さくらんぼも流し
牛百頭取り残されし秋出水

  都築華子さん
凌宵花わが青春の春夫の詩
筍をさつくり割りしゾーリンゲン
いつの間に夫も甘党桜餅

  田中温子さん
今日ひとひ無事に了へたるはうれん草
うちの子と言ひて朝顔商へる
新涼や席譲られることに慣れ