桂吉坊の「深山隠れ」中 ― 2024/02/03 07:10
噺家山御霊ヶ嶽を越えて、町へ買い出しに行った一座4、5人が、二十日経っても、帰って来ないので、もう4、5人が迎えに行く。 しかし、七日、十日経っても、帰って来ない。 また、4、5人が迎えに行く。 だが、七日、十日経っても、帰って来ない。 年嵩の男まで送り出すと、村に男手がなくなった。 女、子供だけになり、庄屋の梶田源左衛門と、息子の新吾、源吾兄弟が残った。 兄の新吾が迎えに行くことになる。 兄さん、気を付けて、と送り出したが、その新吾も帰って来ない。 それで弟の源吾が行くことになった。
山には、女盗賊がいると聞いていた。 カルサン袴の源吾は、ええ男、色男、剣術もできる。 日が暮れて、提灯を手に、山道をとぼとぼと。(太鼓、三味線の鳴り物が入る) 嫌だが、行かなければしょうがない、下腹に力を入れて進む。 何か、いる、ガサガサ音がする。 マムシか? 竹の葉が、鳴っているだけだった。 人間が通った跡がある。 白いものが、ぼんやりと見え、娘が倒れていた。 いかがいたした? これはこれは、お侍様、持病の癪(しゃく)が出ましたが、治まったところで。 お侍様は、なぜこちらへ? 武者修行じゃ。 チャンチャンチャン、被衣(カツギ)高足駄の娘に、付いて行く。 カランコロン、カランコロン、山をぐるりと回り、崖の深い谷にかかる丸木の一本橋も、先にすいすい渡って行く。 狐狸妖怪か。 刀で、エイッ! 正体現せ、尻尾を出せ! 尻尾がない、人間であったか。
源吾は女をそのままにして進むと、屋敷があり、城のような塀に囲まれている。 中に、ガラの悪い山賊連中が二十人ばかり。 お頭の願いは、千人目の男の生き血を飲めば、叶う。 妹御前(いもうとごぜ)が、首を取りに行った、と前祝いの酒を酌み交わして騒いでいる。
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