京都の老舗あれこれ、着物のコーディネート2024/07/24 06:53

 通崎睦美さんは、京都には、老舗の風格が漂う「今昔西村」をはじめ、結構な数の古着屋さんがあって、店主の「目」を感じることができるという。 睦美さんが通いつめているのは、東山三条にある「裂(きれ)・菅野(すがの)」、店主の菅野伸子さんを勝手に師と仰いで、勝手になついているそうだ。

 自分は古道具屋でみつけた扇子を使っているが、プレゼントのお扇子は、やっぱり「宮脇売扇庵」で買い求める。 お客さんがあるというと、麩は「麩嘉(ふうか)」まで買いに行こうか、漬け物はどこにしよう、と自然に老舗の看板が頭に浮かぶ。 考えてみれば、京都は老舗でなくても上質なものが手に入りやすいうえに、老舗は「そのへん」にある。

 老舗は「せめて百年でないとね」と、よく耳にするが、創業百年以上の店が京都の街には軽く五百軒を超えるという。 「とらや」は、1600年頃には、すでに菓子業を営んでいた記録があり、お店のいろいろに使われている虎の絵のことをたずねたら、うちが鉄斎さんに間貸しをしていたことがありましてね、ときた。 「宮脇売扇庵」の扇面画をちりばめた格天井も、明治京都画壇の作品がずらり、富岡鉄斎、竹内栖鳳、山元春挙等々が並んでいる。

 着物に興味を持ち始めた頃、弘法さんの市で、とても雰囲気のある下駄が目にとまって、買った。 家で早速履いてみようとしたが、鼻緒がきつくてどうにも足が入らない。 行きつけの店はないし、デパートでは直してもらえそうにない。 思いついたのが、四条河原町の「伊と忠」、老舗履物店として雑誌などによく登場している店だ。 遠慮がちに風呂敷包みをといて下駄を出すと、奥から出てきた番頭さんが「へぇ、桐の柾目のいい下駄ですね、今ではなかなか手に入りませんよ。どうしはったんですか。」と声をかけてくれた。 それですっかり気持がほぐれ、たくさんの伊と忠製鼻緒の中から、黒と茶の縦縞のものを選び、その場で新しいものにすげ替えてもらった。

 変わった図柄の色足袋・がら足袋を履いて歩いていると、着物好きの人からよく声をかけられる。 「へぇ、めずらしい足袋。御誂えでしょ。」 ほとんどが誂えではなく既製品。 実は、東京で買う、向島の「めうやが」、江戸の老舗が並ぶデパートの催事で出会った。

 アサヒビールが主催する文化講座で、「アンティークきものの世界~きこなすアート」という話をした。 着物の図案をアートとしてとらえる。 152~153頁に、「銘仙のきもの」の写真がある。 大正から昭和初期、図案を「デザイン」としてとらえ始めた頃の、気迫や楽しみが見える着物だ。 講師だから「かしこそうに見える」コーディネートの着物にした。 箪笥の中から、からし色の無地に、蜘蛛の巣文様が描いてある錦紗の着物を選びだした。 地味な色目ながら、蜘蛛の巣文様というひねりがいい。 あまりさみしいのもよくないかと、帯はピカソを思わせるような派手めなものを合わせてみた。

 ところが後日、ある本にこう書いてあった。 「蜘蛛の巣の糸が張られた意匠は、よい鴨がひっかかりますように、と花柳界の女性が好んで着た着物。」

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