祇園祭の厄除けお粽、和菓子屋三種、おけら詣り2024/07/26 07:03

 通崎睦美著『天使突破一丁目―着物と自転車と』(淡交社・2002年初版刊行)から、京都のことを、もう少し書く。 京都の方、といっても市内でなく、府内の方だが、祇園祭の厄除けお粽「鶏鉾厄除御粽」をいただいたことがあった。(「蘇民将来之子孫也」<小人閑居日記 2008.7.21.>) 通崎睦美さんの本に、浴衣を着たお札(ふだ)売りの子供達が声を合わせて繰り返す、歌声が出ている。 各鉾町によって歌詞や微妙な節回しの違いがあるそうだが…。

 「厄よけ火よけのお粽は これよりでます つねはでません今晩かぎり ご信心のおん方さまは うけてお帰りなされましょう おろうそく一ちょう 献じられましょう」

 京都の町の中には千件を超える和菓子を扱う店があるが、一般的に、扱う品物の違いによって、三つの分類が人々の間に浸透している、という。 お餅、赤飯をメインとしながらお饅頭も売る「おもちやさん」、多種類の饅頭や餅菓子を並べる「おまんやさん」、そしてお茶席で使う上菓子を扱う「菓子司(かしつかさ)」。 この「菓子司」が普段は「お菓子やさん」と呼ばれている。 睦美さんの家から一番近い「おもちやさん」は、「小島餅本店」、一番近い「菓子司」は、お茶人さんの間での評判も高い「末富(すえとみ)」。 それぞれのおじさんを呼ぶときは、「小島のおっちゃん」、「末富さんのご主人」となる。 三種の店には、そういうニュアンスの違いがある。

 大晦日から元旦にかけて、祇園の八坂神社にお詣りする。 境内で買った縄に、本殿前のおけら灯籠からおけら火をいただき、火が消えないように縄をくるくる回しながら、家に持ち帰る。 そして、その火を神棚の灯明に灯したり、雑煮を炊く時に用いるなどして無病息災を願い、新年を祝う。 これが、京都で古くから行われているお正月を迎える行事、おけら詣りである。

 おけら火のもとの火は、一年中絶やすことのない御神火として本殿に灯される浄火。 毎年十二月二十八日の寅の刻、午前四時に鑽火式(ひきりしき)を行い、身を清めた権宮司が、古式に従い檜の火鑽り杵(ひきりきね)と火鑽り臼をこすり合わせて、鑽りだす。 この日が大晦日の除夜祭で、削り掛けの木片(檜の削りくず)に移され、参拝者が願い事を書いて奉納したおけら木とおけらの根をまぜ、鉄灯籠で炊かれる。 ちなみに、おけらとはキク科の植物で、健胃の薬草として知られ、邪気を祓う力があるとされている。

 燃え残った縄は、台所に祀っておくと、火伏のお守りになる。 浄火を移す檜の削りくずは、老舗の箸店、市原平兵衛商店で檜箸を作る時に出る削り屑で、毎年、事始めの日に納められるのだそうだ。