『虎に翼』と、「必敗」報告 無視して開戦2024/08/14 07:22

 朝ドラ『虎に翼』の副題は、「春の旅」中止、火野正平『にっぽん縦断こころ旅』<小人閑居日記 2024.6.13.>に、第11週までを挙げた。 第12週からは「家に女房なきは火のない炉のごとし?」、「女房は掃きだめから拾え?」、「女房百日、馬二十日?」、「女房は山の神、百石の位?」、「女やもめに花が咲く?」「女の情に蛇が住む?」、「七人の子は生(な)すとも女に心許すな?」、「悪女の賢者ぶり?」と来ている。 「女房百日、馬二十日」は、妻は百日、馬は二十日もすると飽きてしまうから、どんなことでも最初は興味があるが、すぐに飽きてしまうこと、だそうだ。 「女の情に蛇が住む」は、女の情愛は執念深いこと。 「悪女の賢者ぶり」は、心の中が悪い女性が、とても賢い人のふりをして、人々をだまそうとすること。

 8月2日の放送で、佐田寅子(伊藤沙莉)がやがて再婚することになる星航一(岡田将生(まさき))の悩みが、「総力戦研究所」で、模擬内閣の一員として、対米戦争の机上演習を行い、「必敗」の結論を出したが、為政者はそれを無視して開戦に踏み切り、国民に塗炭の苦しみを与えてしまったことだった、というのをやっていた。

 星航一のモデル、三淵乾太郎は、昭和15(1940)年に内閣総理大臣直轄で組織された「総力戦研究所」の一期生で、模擬内閣では司法大臣兼法制局長官だったそうだ。

 たまたま、その放送のあった8月2日の朝日新聞朝刊一面トップは、企画もの『百年 未来への歴史』序章「瀬戸際の時代」、見出しは「持たざる国 逆戻りの日本」、その続きの2面に「「必敗」報告 聞き入れられず開戦」があった。

「欧州でナチス・ドイツと英仏が衝突した39年9月には、帝国陸軍内部に「戦争経済研究班」(秋丸機関)が設置され、秋丸次朗・陸軍中佐が学者に委嘱し、対英米戦に踏み切った場合の勝算を経済的側面から分析、日米開戦半年前の41年7月に「経済戦力の比は20対1程度と判断するが、開戦後2年間は貯備戦力によって抗戦可能、それ以後は我が経済戦力は下降をたどり、持久戦には耐えがたい」との報告書をまとめている。」

「40年9月には近衛内閣が「総力戦研究所」を設置した。「武力、思想、政略、経済戦を一元的に総合せる総力戦に関する体系の不十分なる現状を打開すること」を目的とした。だが、こちらも41年8月、対米戦争は「必敗」と報告した。」

「だが、当時の東条英機陸相らはこうした分析を聞き入れなかった。秋丸機関を率いた秋丸氏は、敗戦から40年以上経ち、「秋丸機関の顛末」を執筆し、こう語った。「既に開戦不可避と考えている軍部にとっては都合の悪い結論であり、消極的平和論には耳を貸す様子もなく、大勢は無謀な戦争へと傾斜した」」

 なお、当日記では、2022年1月、「1941日本はなぜ開戦したのか」「日米諒解案」<小人閑居日記 2022.1.8.>に始まり、失敗の記録、日本政府と私<小人閑居日記 2022.1.25.>まで書いた中で、秋丸機関「幻の報告書」、国力の差は承知していた<小人閑居日記 2022.1.11.>を書いていた。