春風亭一朝の「一分茶番」前半 ― 2024/08/25 07:24
絽の着物の一朝、決め台詞を言って拍手をもらう。 素人芝居は役もめが常で、くじ引きで役を決めたら、非人の権平になった伊勢屋の若旦那が出て来ない。 番頭がウチで手の空いている者というと、飯炊きの権助。 薪を割っていたが、アンカ用かね。 芝居は出来るか。 かー…?、かーとは人を疑う言葉ではないか。 国では、お役者様だ、「ハナデフンチョウチンブラ」をやった。 仮名手本忠臣蔵だな、何段目だ? 高い所できれいなアマッコが鏡を見ていて、下に野良野郎が長い書き出し(手紙)を持っているのをやった。 七段目、一力の場だ、お前は何をやった。 おら、アマッコガタをやりました。 女形か、よくやらせたな。 ハンペンの女房で、ヒカル。 勘平の女房、お軽だ。 由良之助は、下新田(しもしんでん)の茂十だが、うまくいかない、セリフを忘れて、「そこにいるのは、」まで言って「お軽でねーーけ」の「お軽」を忘れて、汗ダラダラ!「誰だっけ……?」 「オラが誰だか当てて見ろ」 「権助じゃないか」 おら、穴埋めてやった、「オラは確かに権助、お前は茂十」 穴埋めになってないよ。 二階からケツまくって、飛び降りた。 見物が黙ってねえ、アマッコガタのマタグラにぶらさがっているものがある、今年のお軽はオスだんべ。
これは、私の気持だ、取っといてくれ。 そんなものはもらえない、番頭さんには、お世話になってる。 (と、言いながら、開けて)一分、入ってた。 取っといてくれ。 伊勢屋の若旦那は、非人の権平の役だった、刀を持って宝蔵に忍び込んで、宝物の御鏡(みかがみ)を盗んで来る。 盗っ人け、一分お返しするべ、おらは正直者の権助で通っているだ、ご先祖様に申し訳がない。 芝居だよ、芝居、御鏡も曲げ物に銀紙を貼ったものだ、本当に盗むんじゃない。 あれ、本当ではない、一分、もらっておきます。
宝蔵を切り破って出て、御鏡を押し頂いて、「ありがてえ、かっちけねえ、まんまと宝蔵に忍び入り、奪い取ったるユズリハの御鏡、小藤太さまに差し上げれば、褒美の金は望み次第。人目にかからぬその内に、ちっとも早く」とセリフを言う。 それ、いつやる? 今日。 駄目だ、一日で覚えられない。 鏡に書いておいてやる。 カナで、お願いします。
等々力短信 第1182号は… ― 2024/08/25 20:25
<等々力短信 第1182号 2024(令和6).8.25.>黒井千次さんの『老いの深み』 は、8月21日にアップしました。 8月21日をご覧ください。
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