柳家小もんの「もぐら泥」 ― 2024/09/11 07:07
9月5日は、第675回の落語研究会、よみうり大手町ホール。 柳家小もんは、小里んの弟子、2018年春二ッ目。 髪を七三に分け、黒い羽織に、ブルーグレーの着物。 泥棒は、いるものだと、浅草寺の賽銭泥棒がまっすぐ仲見世を出て門の仁王に踏みつけられて、ブーッと一発、曲者!におうか!の小咄と、料理屋に入った親分が五十両盗ったものの、鯉の洗いと鯉こくで五十両払わせられ、外の子分に中の首尾は? シッ、こいが高いの小咄。
もぐら泥棒というのがある。 昼間は表からじっくり眺めて、杖や爪で跡をつける。 それを頭に入れて夜、泥棒に入る。 昔の家は、土台がしっかりしていない。 敷居の下に穴を掘って、手を入れて掛金を外す。
おかしいな、どうやっても今月の勘定が合わない。 (主人が)ソロバンを、チュチュチュチュ、おかしいな。 おい、あくびしながら、亭主に返事をするな。 さっさと、寝ちまいな。 お前、何か買ったものはないか? 安かったんで、隣のお光さんとお揃いの反物を買いました。 いくらだ? そんなにしたのか、それだよ。 あと、二円合わない。
もぐら泥棒が、敷居の下を掘り始める。 穴を掘って、左手を入れるが、掛金がない。 見当違いか、あと少しなんだが、わずかに届かない、あと、二寸なんだが。 お前、何か言ったか。 あと、二円。 あと、二寸。
オッ、手が生えているぞ、泥棒だ。 番屋へ突き出せば、褒美がもらえる。 細引きをくれ、縄だよ。 この野郎!(と、腕を縛りあげる) ここの旦那ですか、よして下さい。 痛ェー、痛ェーーッ、腕が千切れる、引っ張っちゃあ、いけない。 やめなさいよ、怨みに思って、仕返しをされるから。 おかみさんですか、そうです、子分が六十人からいるんで、きっと仕返しに来ます。 痛ェー、痛ェーーッ、実は仕事がなくて、七十になるお袋が病んでいるんだが、養えない。 一人を養えない奴に、子分が六十人からいるものか。 勘弁してよ(と、泣く)。 仲間がいるから、火をつけるぞ。 この家は、借りてんだ。 勘弁してくれよ。
冗談じゃないよ、静かになった、寝ちゃったのか。 シッ、シッ! 犬が来た、臭いを嗅ぐな。 足を上げて、何すんだ。 ちくしょう、小便をかけやがった。 (それを見た、酔っぱらいが来て)俺も、ここで小便をして帰ろう。 飲み屋のおやじも嫌なことを言う、今度金を持って来なきゃあ飲ませないなんて…。 おい、ここだよ! (下の、横たわっている男に気づき)何だ、寝てんのか、寝るなら家に帰って寝たらどうだ。 盗っ人だ。 欲深えな、家ごと持っていこうってのか。 酒を飲ませてやるから、手を貸せ。 手を突っ込んで、忍び返しの中に、がま口と小刀が入っているのを取ってくれ、小刀で細引を切るから。 褌(みつ)に手を入れちゃあ、くすぐったい、背中の方だ。 がま口、ずいぶん入っているじゃねえか、十円ばかりある。 小刀を出せ。 お前、動けねえのか。 十円ありゃあ、酒をご馳にならなくても、借金も返して釣りがくる、あばよ! アッ、ちきしょう、ドロボー!
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