柳家小満んの「猫の災難」前半 ― 2024/09/13 07:03
小満ん、出囃子は「酔猩々(よいしょうじょう)」、猩々は酒を飲む。 よろよろと出てきましたが、酔っ払ってるんじゃなくて、よろけているだけ。 今日は、噺の中で酒を飲む。 ある人が、一日でウイスキー一本飲むと聞いて、真似してみたが、ウイスキーは飽きてくる、眠くなる。 日本酒はいける、小唄を歌ったりして、いつまでも飲める。 ワインは……、わからない。 肴は、あっても、なくてもいい。 何もないけどって、塩せんべい割って飲んだこともある。 銚子の民宿に十人で行って、ビール一本、お銚子百本燗つけて持って来いといったら、徳利が数あって、百本持って来た。 一人十本、飲み切れない。 朝早く起きて、また飲んだ。 しくじりは、憶えている。
久しぶりの休みなのに、一文無しだ。 酒、湧いてこないかな。 熊さん、帰ってたの、ウチの猫が病気で、お見舞に鯛をもらった。 身だけ食べさせて、頭と尻尾を捨てようと思って。 いただきますよ、おかみさん、猫によろしく。 大きいテエだ、笊(ざる)をかぶせたら、まるまる一匹に見える。
兄貴じゃないか。 お前とここで二人で飲みてえと思って来た、懐はたっぷりなんだ。 お前とさしでな。 何も肴がないよ。 台所にすげえテエがあるじゃないか。 もらったんだ、三枚に下ろして、まあ、食えねえことはねえ。 俺が、酒を買うよ。 気の毒だな。 一升壜を貸せ。 表の酒屋へ行ってくる。 あそこは駄目、酒くれないで、金だけ取られる。 その先の酒屋は? あそこも駄目、先月の勘定がある。 小橋を渡った小西は、いい酒なんだが、計りが面白くない、五合でも五合しかこない。 当り前だ。 一升壜に一合というと、計りがいい。 五合ありゃあ、いいだろう。 テエは、ウロコをちゃんと落とせよ。
ありがてえ、酒ができたよ。 テエの言い訳を考えなくっちゃ。 隣の猫が来て、くわえて逃げちゃった、ってことにするか。
向うで一杯やったが、小西、いい酒だ。 三枚に下ろしたら、台所がガタガタするじゃねえか、隣の猫だ、テエをくわえてる。 大きな声でね、もしもし、持っていかれちゃあ困る、と言った。 こちらは足が二本だが、あちらは足が四本、とても追いつかない。 隣に、文句を言え。 言えるもんなら言うが、ふだん何かと世話になってる、こちらは独り者だ。 片身が残ってるだろう。 それが、猫が脇の下にかいこんで、肩にかついで行っちゃったんだ。 肴を探してくるよ、鯛じゃないと気持が悪い。
兄貴にわるいな、酒と肴がタダでそろう。 いい色をしているな、どんな酒だろう、うめえな、ベタベタしてる、喉に広がって、しみわたっていく。 いやあ、油のような酒、いい酒だ、あと引くんだ。 もう半分だけ、つなぎに飲むか。 うっかり、一杯になっちゃった。 どうせ、あいつは、ちびちび飲むんだ。 冷やだよ、肴なんかいらない。 あいつは、むしゃむしゃ食うんだ、いやしいね。 冷やは、あとでドンと来る。 燗徳利に入れて……、なかなか壜から出てこない、入ってるか。 いけねえ、こぼしちゃつた。 畳をこすって、口に入れ、頭になでつける。 徳利の口がいっぱいになっちゃって、これじゃあ燗もつけられねえ、吸い上げるか……、いけねえ、みんな飲んじゃった。 もう、これっぱかりだ、酒屋は計りが悪いな、あらかたやっちゃったよ。 水で割っちゃおうか、でも一合に四合水入れたら、酒っぽい水になっちゃう。
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