『源氏物語』を書くのに使われた貴重な紙 ― 2024/11/13 07:06
NHK総合テレビの『歴史探偵』という番組が、8月28日に大河ドラマ『光る君へ』とのコラボスペシャル2ということで、藤原道長の柄本佑、一条天皇の塩野瑛久(あきひさ)をゲストに放送された。 最初の問題は、『源氏物語』に使われた紙である。 当時、紙は貴重品だった。 書誌学の佐々木孝浩慶應義塾大学斯道文庫教授が登場、『源氏物語』は平安時代の写本はなく、鎌倉時代の最古の写本、幻の巻が千葉県銚子市の飯沼山圓福寺に残っている。 そこから推計すると、『源氏物語』全巻を書くのに、全紙判507枚、2000枚以上の紙が必要だったという。 倉本一宏国際日本文化センター名誉教授は、平安京の一条通に紙屋院という役所があり、紙はもっぱら公文書用だけで、一般に流通していなかったという。
そんな貴重な紙を使って、紫式部が『源氏物語』を書くことができたのは、藤原道長から与えられたからだろうと推測するわけだ。 受領(国守)が税として徴収した紙(越前紙のような)の余りが献上されていた。 京都の陽明文庫にある藤原道長の国宝『御堂関白記』は上質の紙で書かれ、36巻26年にわたる日記である。
大河ドラマ『光る君へ』第30回「つながる言の葉」。 清少納言の『枕草子』が広まっていた。 まひろ(紫式部)は、藤原公任の妻が主催する和歌の会に出ていたが、まひろの書いた「カササギ語り」が『枕草子』より面白いという話題が出る。 藤原道長は長女の彰子を一条天皇の中宮にしたものの、二人の仲はうまくいっていない。 道長は、陰陽師の安倍晴明に、闇の中からいずれ光が差し煌々と照らす、心の中に浮かんだ人に会いに行け、それが光だ、と言われる。 まひろが面白い話を書いたと聞き、会いに行く。
『光る君へ』第31回「月の下で」。 しかし、物語を書くことに夢中な母に、かまってもらえぬ娘の賢子(かたこ)が「カササギ語り」の原稿を燃やしてしまっていた。 道長はまひろに、中宮彰子に献上したいので、もう一度思い出して書けぬか、あるいは新しい物語を書いてくれぬか、と頼む。 帝のお渡りがなく、寂しい中宮様のために。 お前には才がある、俺に力を貸してくれ、また参る、考えてくれ。
そして、越前の紙が大量に届く。 せいいっぱい面白いものを書いてくれ、明るくてよい。 実は、中宮様にとは偽り、すまなかった、帝に献上したい、『枕草子』を超える書物を。 まひろも、帝がお読みになるものを書いてみたい、人柄、若き日のこと、生き身の姿、「帝もまた人でおわす」ということを、と。
道長とまひろ、二人で月を見る。 きれいな月、人はなぜ月を見上げるのか。 月にも人がいて、こちらを見ているからか。 「おかしきことこそ、めでたけれ」。 誰かが今、俺の見ている月を見ていると願いながら、俺は月を見てきた。 (チェロの音楽が流れ、細かい色紙が舞った。)
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