古今亭志ん輔の「今戸の狐」まくら ― 2024/11/26 07:00
エーーーッ、まあ、そういうことで……、最近しゃべってんのが面倒になって、と志ん輔。 終活の前に、断捨離をしようかと思っているが、一つ捨てると、三つ増える。 革ジャンが出てきた、三十四、五、六年前、アメリカがオリンピックのバスケットでソ連に負けた、ソウル大会、次の大会は勝たなきゃあいけないってんで、バルセロナ大会、プロも出した。 オリンピックは、アマチュアの祭典だったはずなのに。 ドリームチーム、マイケル・ジョーダン、ロゴがザーーッと赤白青でU・S・Aと入っている、このグッズが飛ぶように売れた。 渋谷を歩いていたら、そのジャンパーがあった、革がいい、柔らかい。
文楽師匠が、ふぐ鍋をやる、五、六人で酒を飲んで、何かやろうとなった。 チンチロリンやろう。 どんぶりでやるサイコロゲーム、一晩で十五万儲かった。 博打は嫌いなんだけれど。 明くる日、その渋谷の店に行った。 革ジャンの二十八万には足りない、手持ちは三万、まだかなり足りない。 何とかなりませんか? ちょっと待ってください。 いいそうです、毎日見てたでしょ、オーナーもそれを知っていて、いいって言ってます。 十八万で、儲かるのか、トントンでもいいのか。 人間と話している気がした。 家に帰って着たら、赤白青のU・S・A、ぜんぜん似合わない。
それでチンチロリンに凝っちゃって、子供相手にやって、お年玉をみんな取り上げちゃったりした。 サイコロ、気持よい、裏町人生、下で高倉健さんの展示会やってたけれど。 象牙や鹿の角のサイコロが、手に馴染む。 「コツのサイ」と呼ぶ。 三つが、チンチロリン、「狐」。 一つが、チョボイチ。 二つが、丁半。 紀伊國屋寄席で、小三治がトリで「看板のピン」をやった。 小さん師が楽屋で、どういう若いもんか、わかるかと聞いた。 楽屋の空気が、ピーンとなった。 みんなタジタジとなった。 違うよ、あれは漁師なんだ。 小三治が聞けばいいのに、聞かなかった。 うかつにも、聞かなかった。 海っぺりの漁師の休む小屋で囲んでる情景だ。
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