ひとりで静かに好きな本が読める幸せ ― 2024/12/09 07:08
この一年、岩波書店の『図書』の表紙を飾った、小児科医六十年という加藤静允(きよのぶ)さんの絵と文が楽しい。 2月号、緑色のカゼの小鬼(も青鬼というのか)が屋根の端から、逆さまになって、家の玄関を覗いている。 「たっちゃん るす」という貼り紙が、逆さまに貼ってあるのを読んで、「あ、そうか、おらんかったらしゃあない」と、次の家に行く。 はやりカゼ予防のおまじない。 加藤先生は、このおまじないを小児科教室の先輩、よい笑顔の松田道雄先生に教わったそうだ。
「時の総理大臣が全国民にちっちゃいマスク二枚を配ったと言う小咄は、生類憐みの令よりもっと簡単に笑える小咄として二百年後、三百年後にも生き続けることでしょう。それに比べればこの京の流行(はやり)かぜのおまじない札の方がよほど詩情があります。」とある。
12月号は、「京の北に初めて雪の積もる夜」。 白い比叡山の見える、囲炉裏のある書斎に座って、本を読んでいる絵。 「初めての雪ふる夜 じっと坐って 心の中の本をよみます」と、書いてある。
「十二月も半ばを過ぎた或る夜、急に一段と冷え込んできた宵、白いものが降りはじめたと見るうちに、辺りが真っ白になります。」「ひとりで静かに好きな本が読める、これ以上の幸せはこの世にないと思っています。ことに雪の降り出した夜はその幸せが最高になるのを感じます。読みたかった本を手に取って、開くときのうれしさ、本の装幀、本のにおい、表題、目次の活字の美しさ、伝送映像の世紀となっても本がこの世から無くなることはないでしょう。」
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