原武史さんの、『拝謁記』の「読みどころ」2024/12/27 06:56

 原武史さんが、『拝謁記』の「読みどころ」としているのは、つぎの八つである。

(1) 君主意識や政治思想、民主主義や共産主義に対する見方を具体的に語っているところ。 憲法上は「国政に関する権能を有しない」(日本国憲法第四条)とされる象徴天皇制の実態がどうだったかがわかるからだ。

(2) 憲法観を語っているところ。 新憲法に定められた国事行為に関して、根本的にわかっていなくて、まだ旧憲法の天皇大権をもっていると思い込んでいる。

(3) 戦争責任意識、あるいは退位に関する考え方を語っているところ。 道義的な責任を感じているが、退位については一カ所を除いて否定し、天皇の地位にとどまり、苦しい再建の為の努力をする。

(4) 歴史認識について語っているところ。 戦前、政党政治の不信で軍部が台頭したように、政治不信が強まれば、共産主義の影響を受けた学生や労働者が直接行動を起こして、暴発することにならないかという、天皇なりの危機意識をもつ。

(5) 地理感覚について語っているところ。 日本は極東にあって、ソ連や中国、朝鮮半島に接しており、それは共産主義が接近してきていることを意味している。 地理的に日本は米国と違う。

(6) さまざまな人間観を語っているところ。 母親の皇太后節子に対する言及が非常に多い。 妻の香淳皇后、弟の高松宮、三笠宮、「東宮ちゃん」と呼ぶ皇太子明仁。 政治家や軍人。

(7) 戦後巡幸で赴いた各地のほか、訪れた場所、当時の交通事情。(朝日新聞連載「歴史のダイヤグラム」の原武史さんらしい)

 (8)田島道治の日記や田島宛ての書簡を通して、田島が宮内庁長官を辞めたあとの宮中の空気や皇族の動静について新たな事実がわかる。 中でも興味深いのが、1959年に結婚した皇太子妃美智子に関する神谷美恵子の書簡。

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