第190回福沢先生誕生記念会、伊藤公平塾長の年頭挨拶 ― 2025/01/12 08:03
10日は、第190回福沢先生誕生記念会で三田へ行った。 私の唯一の自慢は、大阪堂島の生誕地で開かれた第125回福沢先生誕生記念式典に、志木高校から派遣されて参加したことだ。 第190回ということは、65年が経ったことになる。 あと1年で福沢先生の生きた年数に重なる。 長く健康で生きてきたことに感謝しなければなるまい。(50年前、大阪での福沢先生誕生記念祭<小人閑居日記 2010.1.10.>、杉道助さんの挨拶、板倉卓造さんの講演<小人閑居日記 2010.1.11.>、小泉信三さんのスピーチ「私立学校の幸福」<小人閑居日記 2010.1.12.>参照)
さて、今年の伊藤公平塾長の年頭挨拶。 いずれ『三田評論』で読めると思うが、私の大雑把な聞き書きを綴ることにする。 現在の世界は、自国中心主義、AIなど科学を使える国と使えない国の格差など、さまざまな分断を、どうしたら正しく乗り越えるかが課題である。 福沢先生は、その指針を示していた。 世界の動向を学び続けて、信念を持って発信した。 社会とディベートし、凝り固まることなく、柔軟な姿勢で、しかしその信念は首尾一貫、社会を先導するものであった。
昨年3月27日、中央教育審議会の「高等教育の在り方、将来像」を議論する特別部会で提言をした。 大学に進学する18歳人口は110万人で、多い時の45%ぐらい、2040年には77万人と今から30%減る、60年前の30%になってしまう。 急激な人口収縮で、日本の次のステップを、根本から考え直す必要がある。 福沢先生は、一身独立して一国独立と、現行システムの変革を、一身にして二生を経る時代に説いた。
1877(明治10)年、官立大学卒の給料は私学の10倍、徴兵猶予の優遇もあった。 福沢先生は、社会の発展は、民の自由な発想から、教育は私なり、と言った。 そこで、私(塾長)の15年後の「高等教育の在り方」の提言だが、三つのポイントがある。
(1)質。 知の総和を増やす。 文系理系共に、大学院を当り前にする。 文系を5年にし、理系は4,5年の修士博士課程、大学生の底上げを図る。 一方、大学生のボリュームゾーンは、偏差値50前後だが、一生胸を張って働ける教育をする。 現在は、学部3年で就活に時間を取られ、野菜の早採り状態で、よい野菜にならない。
(2)規模。 現在800ある大学の数を減らす。 学納金を高く設定する、150万円は必要だ。 現在国立で54万円になっているのは、200万円以上の税金を投入しているからで、それはふさわしくない。 欧州では無料だというが、全てが国立で、アメリカは7割が州立だ。 日本は国公立が2割しかない。 国公立と私立が、公平に競争できるようにすれば、自己変革できる大学が残ることになる。
(3)アクセス。 大学の地域分布、学生の懐事情から、大学が大都市に集中してしまう。 学納金が150万円では進学できないから、最先端の科学技術、マイナンバーカード制度を活用して、世帯収入に応じて、国から支援金を連絡し、返済もマイナンバーカードを利用する。 15年後の「高等教育の在り方」だ。
人の話を聴き、本を読むには、集中力が必要だ。 SNSの短いやり取りばかりしているので、まとまった話をする習慣がなくなっている。 「高等教育の在り方」の特別部会の議論も、寄せ書き、寄せ集めで、私のようにパッケージの文章として提言した人はいなかった。 文明の利器の最先端に立つことが必要で、日吉でもAIを使いこなす伝授が始まったし、慶應AIセンターを研究メンバー企業6社と設立し、AI・ロボティクス研究で世界トップの米カーネギーメロン大学と提携、科学研究向けの生成AI研究とAI技術の進化の加速を目指している。 それは独立自尊、人間の尊厳に結びつき、医学も含めて、科学技術と社会の先導である。 慶應義塾では教員の3分紹介(ホームページのK-RIS研究者情報データベースやYouTubeチャンネル)を行っているが、実に多くの教員が、弱者に寄り添い、光を当てる研究に携わっていることがわかる。 それらを総合すれば、社会を変革する先導となる。 力をあわせて、高等教育を変革していきたい。
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