関税「改革保守」の狙い、旧モデルを変え産業や地域再生へ2025/05/01 07:08

 関税強化に突き進む米トランプ政権。 朝日新聞の「インタビュー」は4月3日、それを進言した政権ブレーンの一人、保守派論客のオレン・キャスさんに話を聞いた。 2017~21年の第一次政権の時期から関税政策が米国にとって唯一の解決策だとして、それを練り、進言してきたが、自身は第二次政権には入っていない。 01年の中国のWTO(世界貿易機関)加盟で、米国の産業基盤は(中国の輸出増などにより)加速度的に弱体化し、限界に達していた。 それに伴い、社会も弱体化し、その典型的現象が「絶望死」だ。 特に中年の低学歴の白人の間で、薬物やアルコール依存、自殺が増えた。 グローバル化の下、米国は若者をイラクとアフガニスタンの戦争に送り、失業と絶望を輸入し、大切な仕事を海外に送ってしまったのだ。 経済の金融化と金融危機もあった。 1980年代の保守の発想は「市場経済と自由貿易」だったが、こうした状況を解決するには有効ではなかった。 だから関税なのだ。

 関税は、短期的には物価の上昇など様々な痛みを伴うかもしれないが、長期的には大きな利益をもたらすと思う。 関税には、二つの側面がある。 一つは交渉のツール、もう一つは経済政策の側面だ。 日本経済が輸出入に深く依存していることは理解できる。 これから日米間で、通貨や貿易、産業政策などをめぐる交渉が必要だろう。 貿易の不均衡を解決するには、内需が不足しているといった、日本が解決しなければならない問題もあるが、米国と日本はバランスの取れたパートナーになりうると思っている。

 ここで注意したいのは、日米を含む自由貿易が成立する領域に、中国は加わっていないだろうということだ。 中国と自由貿易を行うということは、共産主義の優先順位や政策を、私たちの社会に受け入れるということである。 私たちは、生産より消費に偏った米国を変えていこうとしている。

 オレン・キャスさん(41)は、20年にルビオ上院議員(現、国務長官(53))と連携して、保守系シンクタンク「アメリカン・コンパス」を創設した。 バンス副大統領(40)とも同世代で、深いつながりがある。 私たちのグループは、ポピュリズム的な「MAGA(米国を再び偉大に)」運動の一員でも、イーロン・マスク氏に代表されるような規制緩和や技術革新に関心が高い「テクノ・リバタリアン」でもない。 妊娠中絶反対派や宗教右派でもない。 あえて言えば、いずれとも異なる「真正の保守派」だ。 普通の家族が自立して生活を営む能力、子供を育てる能力が低下し、地域コミュニティーが弱くなっていることを何よりも問題視する保守派である。

 80年代に確立された(市場経済と自由貿易が善の)保守運動は、冷戦期に共産主義と対抗することが最大の課題だった。 私たちは、現代の課題に保守がどう対応するかを考えている。 格差拡大、労働者と家族、コミュニティーに焦点をあてることが課題だ。 市場は手段であり目的ではない、という認識も必要だ。 まだ保守派は雑多な寄り合いで混乱が続いているが、大きな連合となる可能性があると思う。

 オレン・キャスさんは、トランプ氏を「過渡的な人物」と考えている。 重要なのは、トランプ後だ。 混乱の期間があり、物事が解決され始め、次のリーダーが明確なビジョンを持ち、それを前進させる、「これが新しい保守」の時期が来る。 正直に言えば、トランプ政権の「ショック療法が必要だ」という主張に、より同調している。 なぜなら、古いパラダイムや旧モデルへの強い固執を感じたからだ。 言葉や行動を駆使すれば、何とか旧モデルを維持できる、と信じている人が多いのだ。 米国の外では思考の変化があまりに少なく、米国の変化が理解されていない。 新しい方向に進むための第一歩が、もはや旧モデルは選択肢ではないと納得させることだとしたら、その方法を見つける必要がある。 その意味で、関税政策が実施されたことは、非常に重要だと考えている。

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