柳家さん喬の「水屋の富」後半 ― 2025/06/03 06:55
清兵衛さんは、酒を飲んで寝た。 おい、起きろ! 盗ッ人だ、八百両、これに出せ。 子分に、あとを付けさせたんだ。 このドスが、目にへえらねえか! アーーーッ! 夢か。 竹竿で縁の下を確かめる。
トロトロッとしたら、今度は、違う盗ッ人だ。 また夢だ、寝てられねえや。 竹竿で縁の下を確かめて、水を売りに行かなきゃあ、と出かける。 長屋の入口に、見慣れねえ奴がいる、俺の顔を見て、目をそらしたぞ。 八百両、八百両…。 いけねえ、遅くなっちゃったよ。
ちょいと水屋さん、刻限通り来てもらわなきゃ、困るんだよ。 うちは赤ちゃんがいるんだよ。 明日から、きちんと参ります。 湯に行って帰り、竹竿で縁の下を確かめて、酒を飲んで寝る。
石川五右衛門と一緒に釜茹でにされ、弁慶に薙刀で首をスッポーーンとやられる夢を見る。 竹竿で縁の下を確かめて、出掛ける。 見慣れねえ女がいる、見張りか。 なんだ、あの女、男とイチャイチャしている。 見慣れねえ八百屋だ、見慣れねえ犬だな。 ちょいと水屋さん、刻限通り来てもらわなきゃ、困るんだよ。 うちには年寄がいるんだよ。 湯に行って帰り、竹竿で縁の下を確かめて、酒をチビリチビリ。
盗ッ人が、列をつくっている。 中国人が、マネー! マネー! と言う。 寝ちゃあ、いられない。 すいません、すいません、明日からちゃんと参りますので、ペコペコ。 八百両、八百両…。
清さん、開けてくれねえか、ここ開けてくれ。 俺だよ、六だよ。 何だい六さん、こんな夜中に。 何だい、長屋のみんなも。 清さんは、どうするんだ? この長屋、みんな店立てをくらってるんだ。 大家が小豆相場に手を出して、しくじったんだよ。 清さん、この長屋買っちゃあくれねえか。 みんな知ってるんだよ、湯島の富で八百両当たったって。 買ってくれよ! 買ってくれよ! この通りだ、婆さん、爺さん、寝たっきりなんだ。 知らねえよ。 子供が三人、おじちゃん、買って、買って! うるせえな。 アッ、夢か。 早く代りを見つけて、水屋をやめないと。 八百両、八百両…。
あれ、水屋の野郎、縁の下を竹竿でさぐって、ニヤッとしている。 遊び人の熊、博打で取られた帰りに、この様子を見た。 何かあるな。 何でえ、宝を掘りあてた。 すまねえ、水屋。
清兵衛さん。 疲れたなあ、八百両ありゃあ…。 (竹竿で縁の下を確かめ)八百両、アッ、ない。 俺の八百両、ア、ア、ア、あーあ、今日はゆっくり眠れる。
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