三遊亭朝橘の「位牌屋」2025/12/12 07:14

 落語研究会、前に一度出たら、反響がすごい、同業の若手が教えてくれと、お稽古に来る。 研究、してんだね。 研究、されてんです。 日曜の朝4時なんて、素っ頓狂な時間にやっているのに。 若いのが、酒飲んで寝て、トイレに行って水飲んで、4時でギリギリ。 大事な、意義深い番組なのだ。 我々は、被検体と呼んでよい(と、羽織を脱ぐ)。

 けちん坊の噺で。  旦那様、お目出度いと、番頭。 昨夜、跡取がお生れになった。 旦那は、飯を食うから、頭が痛い、と。 当家は、お付けにも身がない。 いいや、暮に買った擂粉木、一尺八寸あったのが、今一尺五寸になってる、みんなお付けの身になった。 つまみ菜! つまみ菜! 呼んで、買って、お付けの身にしよう。 そっくり、買ってやろう。 商いに出たばかりで有難い、また出られる。 貞吉、裏から荒ムシロを持って来い。 荒ムシロを広げて、つまみ菜をまんべんなく広げろ。 いくらだ? おまけして、百三十で。 そっくりだから、四文でどうだ。 冗談じゃねえ、からかうのか、気を付けろよ。 怒って、行っちゃった。 怒るのは、得が行かない。 貞吉、荒ムシロに残っているつまみ菜を、味噌漉しに入れな。 一杯になったか、半分をお付けの身にして、半分は昼、お浸しにしよう。

 晩のお菜は、どうしましょう。 芋屋、さつまいも! 芋屋、さつまいも! 芋の煮っころがしにしよう。 いくらだ? 一貫目、五十二文で。 高いな、二、三本、おまけをつけろ。 人間諦めが肝心だ、どっさり売った気になってみな。 二本、四文で売りな。 本場川越のしっかりした芋で。 四文で買おう。 腰を下ろして、一服つけなさい。 煙草切らして、今小僧を買いにやっているので、一服つけさせて。 いい葉だ。 口が奢ってるんで。 値が張るだろう、口当たりがいい。 時に芋屋さん、お宅はどちら? 神田堅大工町で。 仕入れは? 神田多町で。 本筋だ。 ご家内は? 家内とガキの四ったりで。 お昼のご膳は? 飯屋で済ませます。 それはいけない、弁当を持って出て、家では湯をいつも沸かしてるから、寄って食べるといい。 と言いながら、煙草入れから、煙草を袖に入れる。 おたくの芋、いい形だね、琉球が薩摩様に献上したような品物だ。 一本、神棚に上げとこう。 お前さん将来、芋問屋になるような、いい顔だ。 天秤棒しなるほど担いでの、商いはいい。 商人は、損して得取れって、言う。 まあ、負けときなよ。  時に芋屋さん、お宅はどちら? 神田堅大工町で。 仕入れは? 神田多町で。 本筋だ。 ご家内は? 家内とガキの四ったりで。 お昼のご膳は? 飯屋で済ませます。 それはいけない、弁当を持って出て、家では湯をいつも沸かしてるから、寄って食べるといい。 おたくの芋、いい形だね、琉球が薩摩様に献上したような品物だ。 天秤棒しなるほど担いでの、商いはいい。 商人は、損して得取れって、言う。 まあ、負けときなよ。

 時に芋屋さん、お宅はどちら? 以下を、もう一度やろうとすると、そのずらずらを、芋屋がすっかり覚えていて、………………て、言うんでしょう、冗談じゃない、と怒って去る。

 煙草五匁、すっかりくらって、四文で芋をこれだけふんだくった、煙草入からも、こんだけくすねたよ。 貞吉、使いに行ってくれ、仏師屋、位牌屋に頼んだ位牌がある、豆腐屋の前だ。 豆腐屋? カラ屋ですね、ウチではオカラしか買わないから。 馬の草鞋を履いてけ。 あれはもう擦り切れました。 じゃあ裸足で行って、向こうの下駄を履いてこい。

 やーい、位牌屋さん。 なんだ赤螺屋の小僧さんか。 頼んだ位牌頂きに来ました。 裏を塗らないやつだな、漆代負けろといわれて。 小僧を買いにやっているので、一服つけさせて。 お前が、小僧じゃないか、好きにやんな。 落ち着きゃあ一人前なんだから。 ウェ、エヘ、エヘ、ゲホッ、ゲホッ! うまい。 時に位牌屋さん、お宅はどちら? ここだよ。 ご家内は? カカアに、職人が二人。 お昼のご膳はどこで? ここで。 天秤棒しなるほど担いでの、商いはいい。 担がない。 などと、真似して、煙草を袖に入れる。 脇の棚にある小さいのは、何で? 子供の位牌だ。 手に取ると、いい形だ。 神棚に上げよう。 罰が当たるよ。 くれてやるから。

 只今。 下駄履いて、煙草入から煙草くすねてきました。 でかした。 それから、只もらってきた、子供の位牌。 お前! 縁起でもない、こんなもの貰って来てどうしようってんだ? 昨夜産まれたお坊っちゃんのに。