「藤沢七福神初詣」遊行寺坂を登る2025/01/07 07:09

遊行寺本堂

 5日は、三田あるこう会の第573回例会「藤沢七福神初詣」があった。 JR東海道線の藤沢駅集合、最初に江の島へ行く江の島道の分岐点「江の島弁財天道標」へ行く。 集合場所で2日、3日の「箱根駅伝」の話がたくさん出たので、当番の辻龍也さんが急遽予定コースを少し変え、箱根駅伝で名前の出る「藤沢橋」を渡ることにし、「遊行寺坂」の登りにかかる。 坂の手前を右に入って、感応院の「寿老人」に寄り、遊行寺を左に見ながら、坂を登って、諏訪神社、72段の階段を上って「大黒天」。 地元の建築関係の頭の名前の入った「四神剣(旗)」の保管庫があり、落語の「百川」「主人家のかきゃあにん」「四神剣の掛合人」を思い出す。 遊行寺へは、遊行寺坂からは入らず、細い道を山門の方へ回って、正面からまっすぐ本堂へ、石畳を登る。 立派なお寺だ、回廊の下をくぐって、境内の宇賀神社「弁財天」へ。

 遊行寺は俗称で、正式には藤沢山(とうたくさん)無量光院 清浄光寺(しょうじょうこうじ)、時宗総本山。 一遍が諸国遊行の際、鎌倉入りを武士に阻止されて、ここを念仏道場としたのに起源、1325(正中2)年遊行四代上人呑海が寺院を創建したから、開山700年になる。 時宗は、1274(文永11)年に一遍が開宗した日本浄土教の一門で、一遍が門下の僧尼を唐の善導にならって時衆と称したのに始まる。 浄土三部経のうち、特に阿弥陀経を所依とし、平生を臨終と心得て念仏することを旨とする。 遊行(僧が修行・説法のため諸国をめぐり歩くこと)と賦算(ふさん、一遍が熊野神から受けた神託にもとづいて「南無阿弥陀仏、決定往生(けつじょうおうじょう)六十万人」と記した札を配ること)・踊念仏(空也念仏のこと。太鼓や鉦を打ち念仏・和讃を高唱する所作が踊るのに似るからいう)を行う。 2019年5月の「日曜美術館」に「踊らばおどれ~一遍聖絵の旅」、一遍の生き方に心酔する舞踏家の田中泯さんが、絵巻に描かれた踊り念仏発祥の地を訪ねる番組があった。

 「遊行寺の札切(ふだきり)」という季題が『角川俳句大歳時記』にあった。 季節は「新年」、傍題は「お符切(おふだきり)」「初お札(はつおふだ)」。 解説「神奈川県藤沢市の時宗総本山遊行寺(清浄光寺)で、正月11日に行われる行事。宗祖一遍上人自らが刻した六字名号の札を刷り、これを截つ。この念仏札には「南無阿弥陀仏」と書かれ、その下に小さく二行に「決定往生・六十万人」と記してある。これは一遍上人の神授感得の頌(じゅ)の「六字名号一遍法。十界依正一遍体。万行離念一念証。人中上々妙妙華」の中から、頭の一文字ずつを取って「六十万人の頌」ともいう。この札は、遊行人が諸国に遊行する折に、結縁のため大衆に配られた。(榎本好宏)」

令和六年『夏潮』「雑詠」掲載句2025/01/01 08:31

明けましておめでとうございます。 元日の恒例になった昨年の『夏潮』「雑詠」掲載句を、お笑い草にご覧に入れることにします。

一月号
寅さんと源ちやんの土手猫じやらし
曼殊沙華ポツポツと咲く彼岸かな
    二月号
秋麗波打ち際をバス走り
十三夜の饅頭の上薄の絵
    三月号
時雨るゝや老の歩みの覚束無
時雨るゝや賀状止めるといふ便り
お茶請にどさり茎漬スキー宿
    二百号に寄せて
勇を鼓し五年連用日記買ふ
    四月号
  投句忘れ
    五月号
読初や「ぼんやりの時間」てふ本を
電柱の碍子光らせ冬夕焼
ゆづりはや代々継ぎし衛門の名
夏場所や力士浴衣の藍の色
    六月号
改装の囲ひに香る梅の鉢
雛を見に目黒の急な坂下る
面長ののんびり顔や昔雛
    七月号
老散歩沈丁花嗅ぎまた歩き
たんぽぽの絮が車内を通り抜け
    八月号
霜除ファン回り八十八夜かな
本郷の路地の奥なる残花かな
    九月号
夏霞にぬつと現はれクルーズ船
後背の闇の深さや薪能
薪能南大門を浮き立たせ
    十月号
銀ブラや苺パフェの千疋屋
福羽イチゴ御苑生れの誉れかな
ショートケーキ断面見事これ苺
    十一月号
バイデンは二つ年下昼寝する
巌檜葉や盆栽村の路地狭く
    十二月号
八十年ブヨと呼びきて汝はブユか
トニー谷何ン残暑てふ暑さかな

「ペチカ」と「北風」の句会2024/12/16 07:04

 12日は寒い日だったが、『夏潮』渋谷句会があった。 兼題は「ペチカ」と「北風」、これが難題で、何も浮かばず、ぎりぎりになって、何とか次の七句を用意した。
白秋の恋もペチカも燃えてをり
「戦争と平和」の平和ペチカかな
抑留のペチカなどなき苛酷かな
北風や外遊びせよ寒太郎
北風や北へ向い(ひ)て坂登る  (仮名遣いの違いを、後で気付いた)
夕富士のすつくと立ちて北風に
北風に背中を押され老い散歩

 私が選句したのは、つぎの七句。
ペチカ燃ゆ子に読み聞かせぐりとぐら  作子
大連の思い出話まずペチカ        耕一
ペチカ燃ゆ小樽運河の喫茶店      庸夫
畑仕事筑波ならひに首すくめ       和子
街の灯の今宵きれぎれ北風(きた)強し 伸子
北風に向かひて歩む決意秘め      金太郎
北風や怒濤の散らす潮の泡        なな

 本井英主宰は総評で、難しい兼題だった、と。 「ペチカ」は、実感がない、ロシアっぽい、という隔靴掻痒の季題。 名曲の、あの歌の雰囲気に引きずられる。 歳時記の季題になったのは、満州あたりからなのだろう。 「北風」は、逆に当り前すぎて、どこかで聞いたことのある句になってしまう。

私の結果。 互選では、<白秋の恋もペチカも燃えてをり>を照男さんが、<北風や外遊びせよ寒太郎>を孝子さんが採ってくれた。 二票のみか、今月は鳴かず飛ばずかと思っていたら、本井英主宰が三句も選んでくれて、救われた。 選評とともに掲げる。

<「戦争と平和」の平和ペチカかな>…凝った句。『戦争と平和』、人の名前が沢山出てきて、途中でよくわからなくなる。平和という切り方がいい、上手い句。
<北風や北へ向い(ひ)て坂登る>…頑張っている。『坂の上の雲』じゃないけれど、志を感じさせる。(私が選句した金太郎さんの句と共鳴して助けられたかも。)
<夕富士のすつくと立ちて北風に>…全部が見える富士山。ちっとも北風に負けていないところが、気持よい句。

「目貼」と「神の留守」の句会2024/11/23 07:35

 14日は、『夏潮』渋谷句会だった。 兼題は「目貼」と「神の留守」、私はつぎの七句を出した。
炭住のがたぴし窓に厚目貼
曲家の北窓目貼馬眠る
枕許目貼してありスキー宿
秋なくていきなり冬や神の留守
変らずに鳥居一礼神の留守
神の留守マッチングアプリご繁盛
神ゐるやガザウクライナ神の留守

 私が選句したのは、つぎの七句。
目貼すや娘一家が来てくれて     英
玄関の引戸片側目貼して        和子
山中の庵に目貼一人住む       明雀
目貼して薪割をして山の宿       美保
ひつそりと由比の若宮神の留守   英
缶蹴つて子等散り散りに神の留守  礼子
神の留守小豆の干され百姓家    作子

 私の結果。 <炭住のがたぴし窓に厚目貼>を英主宰・和子さん・さえさん、<曲家の北窓目貼馬眠る>を孝子さん、<枕許目貼してありスキー宿>を英主宰・美保さん、<変らずに鳥居一礼神の留守>を庸夫さん・真智子さん・照男さん・幸枝さん・作子さん、<神ゐるやガザウクライナ神の留守>を美保さんが採ってくれた。 主宰選2句、互選10票、計12票と、先月に続いて、思いのほかの成績だった。

 拙句、主宰選評。 <炭住のがたぴし窓に厚目貼>…炭住、炭鉱住宅、戦後の復興期にはあった。ボタ山、「13,800円」という歌があった(フランク永井。1957年「もっこかつげや つるっぱしふるえ 歌え陽気に 炭坑節 黒いダイヤに 惚れたのさ 楽じゃないけど 13,800円 たまにゃ一ぱい たまにゃ一ぱい 呑めるじゃないか」)、荒くれ男、危険な粉塵爆発、懐かしいような暮らし。俳句の持っている、ある種の意味。 <枕許目貼してありスキー宿>…そうだったですね、白馬とか、八方とか、民宿ばかり。壁が凍っていて、野沢菜ばかり出て、ある時代を感じて面白かった。(私は、関燕のスキー宿でつくった。)

 句会後、私は宣伝と断って、『夏潮』連載、石神主水さんの『時を掘る』を、11日からこのブログに書いていて、ちょうど当日14日には、「そうだ、京都を知ろう」ということで、2012年8月号から2024年11月号まで147回全部の題名一覧表を出した話をさせてもらった。

「平安の花見」、そうだ、京都を知ろう2024/11/14 07:03

 石神主水さんの『時を掘る』、『夏潮』2024年4月号は「平安の花見」。 <山門も伽藍も花の雲の上  虚子> 奈良時代までは中国の詩歌の影響もあり、「梅」を好む傾向があったようだが、平安時代になると、「桜」への想いが強くなるようで、『源氏物語』のなかに登場する「花」について調べた研究によれば、「梅」が52例、「桜」が50例と拮抗している。(伊井春樹「王朝貴族の花見と源氏物語の桜」『京都語文』2003年) 平安の貴族たちも、山へと桜を愛でに訪ね歩いていて、『源氏物語』の紫の上との出会いでも、「わらわやみ」を患った光源氏が北山の「なにがし寺」へ加持祈祷に行き、山桜が盛りの境内で、幼い紫の上を垣間見する場面が出てくる。 石神主水さんは、紫の上と山桜を重ねた描写は、平安の貴族社会における「桜」の捉え方を示しているということができるだろう、という。

 実際の貴族の花見については、彼らが残した日記から知ることができる。 花山院に仕えた藤原実資の日記『小右記』には、旧暦三月に色々な場所へと花見に訪れていることがわかる。 たとえば花山院は東山椿ヶ峰の西麓にあったとされる円成寺(現・大豊神社)や現在の岡崎付近を頻繁に訪れており、大抵は馬で出掛けている。 そして紫式部の母方の曽祖父にあたる藤原文範の山荘を訪れていたようだ。 上記の北山の「なにがし寺」のモデルと言われる大雲寺を創建したのも文範だ。

 藤原道長も、花山院と花見に出掛けている。 『御堂関白記』には、やはり東山の白河院から観音院へ牛車で行き、お昼ご飯を食べつつ、お題を出して歌を詠んでいる。 こうした花見のあり方は、平安貴族に共通したものだったようで、いくつかの花の名所を訪ねて、歌を詠むことが主たる目的であったことができる、と石神主水さんは指摘する。

 ことほどさように、石神主水さんの『時を掘る』によって、京都の歴史をあれこれ知ることができる。 2024年11月号までの題名を列挙しておく。 2020年12月号に「紙屋院」もあった。

 2012年 8月号 1. 星宿図 9月号 2. 波除碑 10月号 3. 長陽の節句 11月号 4. 神在月 12月号 5. 炭
 2013年 1月号 6. 矢の考古学 2月号 7. 絵踏 3月号 8. 白魚と台場 4月号 9. 鐘供養 5月号 10. 競馬と馬場 6月号 11. 鰹船 7月号 12. 水売 8月号 13. 盆踊り  9月号 14. ご遷宮 10月号 15. きのこ 11月号 16. 七五三 12月号 17. 煤拂と鯨汁
 2014年 1月号 18. 初夢と富士山 2月号 19. 針供養 3月号 20. 屋根替 4月号 21. 蚕 5月号 22. 粽 6月号 23. 鮎 7月号 24. 氷室 8月号 25. 地蔵盆 9月号 26. 角切 10月号 27. 団栗と稲 11月号 28. 芭蕉忌 12月号 29. 顔見世
 2015年 1月号 30. 鬼 2月号 31. 初午 3月号 32. 涅槃会 4月号 33. 桜 5月号 34. 茶壺 6月号 35. 嘉祥 7月号 36. 蟲干 8月号 37. 大文字 9月号 38. 晴明祭 10月号 39. 去来塚 11月号 40. 炉開 12月号 41. 一陽来復
 2016年 1月号 42. 三猿 2月号 43. 山焼く 3月号 44. 利休忌 4月号 45. 十三詣 5月号 46. 葵祭 6月号 47. 信長忌 7月号 48. 千日詣 8月号 49. 迎鐘 9月号 50. 若冲忌 10月号 51. 十夜念仏 11月号 52. 龍馬忌 12月号 53. すぐき
 2017年 1月号 54. 蹴鞠始 2月号 55. 菜種御供 3月号 56. 釈迦堂の御身拭 4月号 57. 島原太夫道中 5月号 58. 京の筍 6月号 59. 鞍馬の竹伐 7月号 60. きうり塚 8月号 61. 丹波太郎 9月号 62. 鳥相撲 10月号 63. 牛祭 11月号 64. お火焚き 12月号 65. おことうさんどす
 2018年 1月号 66. はなびらもち 2月号 67. 左女牛の神事 3月号 68. はねず踊り 4月号 69. 種物屋 5月号 70. 栴檀講 6月号 71. 初繭 7月号 72. どんどん焼け 8月号 73. 糸人形 9月号 74. 石清水祭 10月号 75. 小倉山 11月号 76. 明治節 12月号 77. にしん蕎麦
 2019年 1月号 78. 弓始 2月号 79. 懸想文売り 3月号 80. 大石忌 4月号 81. 春水 5月号 82. 海龜 6月号 83. 鮎 7月号 84. 屏風祭 8月号 85. 六地蔵 9月号 86. 伏見御香宮 10月号 87. 赦免地踊 11月号 88. 大嘗祭 12月号 89. 除夜の鐘
 2020年 1月号 90. 左義長神事 2月号 91. 太子正当忌 3月号 92. 和泉式部忌 4月号 93. やすらゐ祭 5月号 94. 嵯峨祭 6月号 95. 県祭 7月号 96. 厄除粽 8月号 97. 六斎念仏 9月号 98. 櫛祭 10月号 99. 虚子塔 11月号100. 魚山声明 12月号 101. 紙屋院
 2021年 1月号 102. 楊枝のお加持 2月号 103. 燃灯祭 3月号 104. 小倉餡 4月号 105. 大原野 5月号 106. 駈馬神事 6月号 107. ぬりんべ地蔵 7月号 108. かじのき 8月号 109. 嵯峨天皇祭 9月号110. 真葛ヶ原 10月号 111. 御所 11月号 112. 祇園小唄 12月号 113. 大根焚
 2022年 1月号114. 寅年 2月号 115. 宇治橋 3月号 116. 六波羅野 4月号 117. 鞍馬花供養 5月号 118. 城南宮 7月号 119. 祇園会と祇園祭 8月号 120. 定家忌 9月号 121. 瑞光寺 10月号 122. 狭小神輿 11月号 123. 植物園と占領軍 12月号 124. 龍馬忌
 2023年 1月号 125. 除目 2月号 126. 岡崎神社 3月号 127. 二条城会見 4月号 128. 親鸞 5月号 129. 先斗町 6月号 130. 京の橋 7月号 131. 天文密奏 8月号 132. 瑞泉寺 9月号 133. 比叡山焼き討ち 10月号 134. 社寺林 11月号 135. 紫式部 12月号 136. 宇治橋断碑
2024年 1月号 137. 百人一首かるた 2月号 138. 越前紙 3月号 139. 闘鶏 4月号 140. 平安の花見 5月号 141. 紫野斎院  6月号 142. 鯖鮨 7月号 143. 駒形権現 8月号 144. 天下の三鐘 9月号 145. 地震 10月号 146. 高雄 11月号 147. 讃州寺