“ドラマ・ウィズ・ミュージック” ― 2005/06/10 09:00
『箱根強羅ホテル』、例によって井上ひさし流“ドラマ・ウィズ・ミュージッ ク”になっている。 音楽は宇野誠一郎、戦闘帽をかぶったキーボードの朴勝 哲始め7人のミュージシャンがオケ・ボックスに入っている。 こんな非常時 の話なのに、こんなに楽しそうに歌ったり、(客席も含めて)笑ったりしていい のだろうか。 いいのである。 2月に観た『円生と志ん生』と同じように、 井上さんはどんな悲惨な状況も、立場や見方をかえれば、笑って乗り越えるこ とができるかもしれないのだ、といっているように思う。 『困ったときには』 という劇中歌がある。 「困ったとき 悩んだとき/黙っていよう/苦しいと き 悲しいとき/口を閉じていよう//よく落ちついて/よく考えて/それか らコトバにしよう//空を見あげて/足もとを見て/静かにコトバにしよう」。 貴乃花親方に届けたいような詞だ。
チャイコフスキーの“春の始めの頃だった”という曲だという『みんな人間 よ』、同じくチャイコフスキーの“子守唄”の『鬼ヶ島の子守唄』、どちらもこ の芝居で重要な役割を果たす。 麻実れいと内野聖陽の歌う『鬼ヶ島の子守唄』 などは心に沁みる。(内野は、歌もうまい) 雑誌『すばる』7月号に載ってい る台本で確かめてみたら、井上さんの詞は、実はそんな大したことは言ってい ないのだ。 それが芝居の流れの中で、一生懸命の演者によって歌われると、 光を放つ。 歌の力は偉大である。 そうした全体が、井上さんの「むずかし いことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」なのか もしれない。
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