「夏霞」と「豆飯」の句会2022/05/19 08:02

 12日は「夏潮」渋谷句会だった。 兼題は「夏霞」と「豆飯」で、私は次の七句を出した。

鰯囲ふ沖の生簀に夏霞
横山はベッドタウンや夏霞
茶畑にエンジンの音夏霞
茶覆の黒き連なり夏霞
里山の農家料理屋豆の飯
炊立ても冷めてまたよし豆御飯
板前はぶつきらぼうに豆の飯

 私が選句したのは、次の七句。
田沢湖の睡るがごとく夏霞        なな
湖に沿うて電車や夏霞           さえ
バス釣りの舟二三艘夏霞         裕子
厨から母の鼻歌豆ごはん         裕子
末の児の豆飯の豆そつと除け      正紀
豆飯や父の逝きたる年となり       耕一
豆飯や一汁あれば満ち足りて       孝子

 私の結果は、<鰯囲ふ沖の生簀に夏霞>を英主宰が、<横山はベッドタウンや夏霞>をさえさんが、<茶畑にエンジンの音夏霞>を明雀さんが採ってくれて、主宰選1句、互選2票、計3票と、相変わらずチョボチョボだった。

<鰯囲ふ沖の生簀に夏霞>の主宰選評、あるんですよ鰯の生簀、会話が聞こえてくるようだ。 漁港の400メートルから500メートル先にある、最近葉山にはない、カツオ船などに売る、鰯の養殖はないから。

 私が選句した句で、主宰選にもあったものの、主宰選評。 <田沢湖の睡るがごとく夏霞 なな>…この句会、日本中を旅しているよう、「田沢湖」は虚子のいい写生文がある。乳頭温泉などが思い浮かぶ。田沢湖は深く、「睡る」にふさわしい。 <湖に沿うて電車や夏霞 さえ>…宍道湖の一畑電車など、ぼんやり見えて、夏に入る感じがある。 <バス釣りの舟二三艘夏霞 裕子>…「バス釣りの舟」が上手い、椅子、電動、バウなど、他の釣りと文化が違う、軽薄な感じ、景色がはっきり見えて来る。 <豆飯や一汁あれば満ち足りて 孝子>…なるほど、おかずがなくてもいい、素直な句。

「桜」と「春惜む」の句会2022/04/18 07:07

 珍しく、雨になった14日、渋谷句会が開催され、12月9日以来だから久しぶりに参加した。 幹事役のななさんに「お見限りかと思いました」と言われてしまったが、ほとんど俳句の作り方を忘れた感じがした。 兼題は「桜」と「春惜む」で、新宿御苑吟行句も可だった。 私は、つぎの七句を出した。

ポトマックの桜戦時もきつと咲き
靖国の標準桜古りしかな
桜散る千鳥ヶ淵の墓苑かな
花筏吹き寄せられて色の濃き
花水木写メ撮る人や春惜しむ
ゴミ容器転がつてゐて春惜しむ
生垣は一度(ヒトタビ)赤に春惜しむ

 私が選句したのは、次の七句。
登校の桜下校の桜かな        礼子
剪りし枝口にふくみて桜守       美保
故郷へ帰りそこねて春惜しむ     庸夫
多摩川を次の橋まで春惜しむ     さえ
旬のもの天麩羅に春惜みけり     淳子
集ひまた叶はぬ春を惜しみけり    なな
寓の字の古りし表札竹の秋       盛夫

 私の結果は、互選ゼロだった。 ほとんど俳句の作り方を忘れた感じがした、不勉強の報いである。 スコンクかと覚悟していたところ、英主宰が<花筏吹き寄せられて色の濃き>を採って下さって、危うく救われた。 選評は、上手い句、凝った季題、数珠繋ぎになった花びらが、濃いように見えてきた、落花のときの景。

 主宰の総評。 「春惜む」は重い季題。 高浜虚子に<春惜む命惜むに異らず>があり、虚子忌(4月8日)を「椿寿忌」(戒名が虚子庵高吟椿壽居士)というが、「惜春忌」ともいう。 虚子の別号で「惜春居」という名前があり、「惜春居」という落款も使っていた。

 私の選句した句で、主宰選にもなった句の選評。 <多摩川を次の橋まで春惜しむ>…何川でもよい。橋と橋の、その間の景色を味わう、情がある。 <登校の桜下校の桜かな>…朝の青っぽい桜、夕方の色に染まった桜。朝と夕、それを見る心の様子も、それぞれ違う。 <集ひまた叶はぬ春を惜しみけり>…なるほど、今のコロナ禍を表わす。 <寓の字の古りし表札竹の秋>…そういう表札を見かけたんだろう。どんな人が住んでいるんだろうか。

二年越し「ド・ロさま」の正体判明2022/03/28 07:10

 二年前の2020年3月26日、この日記に藤永貴之さんの第一句集『椎拾ふ』(ふらんす堂)を読ませてもらった感想を書いた。 最後に、「私が知らなかった言葉、読めなかった字。」を23も挙げた。 その中に、「ド・ロさま」があった。 句は、  <ド・ロさまをみな知つてをりクリスマス> というものだった。 みんな知っているというのに、私は知らなかった。

 しばらく前、NHKの『ファミリーヒストリー』に歌手の前川清が登場した。 「長崎は今日も雨だった」がヒットしたから、長崎出身だろうとは思っていたが、出身地は陸の孤島のような長崎県西彼杵郡外海(そとめ)地区、遠藤周作の『沈黙』の舞台(今は遠藤周作文学館があるそうだ)、江戸時代は命懸けの潜伏キリシタンの地で、高祖母ツヤの代から、家族はカトリック、前川清自身もセバスチャンという洗礼名を持つ。 その外海地区に出津(しつ)教会を建て布教したのが、ド・ロ神父だったのだ。

 ド・ロ神父、マルコ・マリー・ド・ロ神父は、天保11(1840)年フランスの由緒ある貴族の次男に生まれ、神学校卒業後、東洋布教のためパリ外国人宣教会に入会、まだキリシタン弾圧の続いていた明治元(1868)年、死も覚悟して来日し、長崎や横浜で活動した。 明治12(1879)年外海の出津・黒崎地区に赴任してからは、田畑にもめぐまれない陸の孤島のような地区の人々の貧しい暮らしをみて、「魂の救済だけでなく、その魂が宿る人間の肉体、生活の改善が必要」と痛感、布教活動とともに、フランスで学んだ建築・医学・産業など幅広い分野の知識を活かし、まず出津に教会堂を建て、教会を中心とした村づくりを始め、明治16(1883)年に救助院を創設、多彩な事業を授産することによって、外海の人々に「自立して生きる力」を与えた。

 一度も母国に帰ることなく、大正3(1914)年享年74歳で逝去し、自らがつくった野道の墓(現出津共同墓地)に眠っている。

令和三年『夏潮』「雑詠」掲載句2022/01/01 07:49

 明けましておめでとうございます。 昨年の元旦は、俳誌『夏潮』令和三年一月号、本井英主宰選「雑詠」の「巻頭」に拙句が掲載されたので、大喜びして令和二年「雑詠」掲載句を出した。 それをまた出すことになるが、令和三年の『夏潮』「雑詠」掲載句をご覧いただくことにしたい。
   一月号
残りページ気にしつつ読む良夜かな
浮き上がる一面の白蕎麦の花
クラシックホテルの庭の良夜かな
お隣につい声掛ける良夜かな
   二月号
庭園に足場を組みて松手入
レストラン更地になりてマスク落つ
もういくつ寝ると死ぬのか暮の秋
   三月号
サーカスのテントの上に銀杏散る
銀杏散る聖徳記念絵画館
切干のにほひ南の日溜りに
   四月号
新年の参賀も中止浮寝鳥
廃校は門だけ残し冬ざるる
   五月号
初場所は親孝行が押しに押し
出出しからスロー人生絵双六
   新年誌上句会
春一番さらりコロナを吹き払へ
   六月号
僧徒さへ武器取りし世も比叡雪
ぼつてりと咲く紅梅や大年増
   七月号
糸桜万燈のごと開きをり
コックスを投げ込む音や水温む
   八月号
駐在の家庭菜園花大根
大根の花薬師寺の塔望む
蛙鳴き雨降り出して昭和の日
   九月号
蝦蛄どさり何もないがと茹でてくれ
縄文の村外れ余花ちらちらと
   十月号
昼顔の道を毎日通り抜け
昼顔や海へと下る崖の道
七十六年摩文仁の丘に夏の雨
   十一月号
梅雨空や知の巨人とは同い年
終バスへ夕菅の野を急ぎけり
団十郎二日休んで今朝咲いて
   十二月号
蚊遣香焚いて換気をいたしをり
カナヘビの卵の孵る刹那かな
今朝の秋おかげさまにて生かされて

「冬芽」と「行く年」の句会2021/12/25 07:09

 12月の『夏潮』渋谷句会は、9日に渋谷区リフレッシュ氷川で開かれた。 兼題は「冬芽」と「行く年」、七句の内三句は近所吟行の句も可。 私は、次の七句を出した。

  行年の喪中葉書の多さかな
  行年や佳いお年をと言ひ交はし
  虎張子追ひ込み作業年惜しむ
  行年や逝きし人らの顔顔顔
  巣籠や冬芽となりて春を待つ
  コブシ冬芽青天に咲く夢を見て
  盆栽村冬芽つんつん山もみじ

 私が選句したのは、次の七句。
  行く年や彼の高座はもう聴けぬ       賢
  行く年や健やかなるを良しとして       孝子
  鏡湖に釣糸垂らし年惜しむ          祐之
  色枯れしばつたを見つめ年惜しむ      祐之
  老いてなほ期することあり冬芽仰ぐ     英
  閑寂の雑木林の冬木の芽           耕一
  寄せつけぬ強さに尖り冬木の芽       伸子

 私の結果。 <虎張子追ひ込み作業年惜しむ>を、耕一さんが採ってくれた互選一票。 トホホホホ。 耕一さんのおかげで、危うくスコンクを逃れたのであった。 やれやれ。