諸行無常が現実肯定を生む、あきらめの中のポジティブ ― 2026/05/08 07:01
神・仏合体。 熊野三山の熊野那智大社、門のところに青岸渡寺があり、仁王の裏に狛犬。 神仏習合。 寺と神社が、一体としてつながっている。 那智の滝は、神そのもの、しぶきと岩肌に千手観音の形。 神仏習合は、千年以上、普通に行われてきた。
吉田一彦教授は、平安時代末、本地垂迹説が出来る。 本地は仏、垂迹は仮の姿(神)。 神は、実は仏様なのである。 習合は、仏教の文化、両者はウィンウィンの関係。 神様は土地に縛られなくなって、分社が全国に展開する文化が、1100年くらい続いた。 明治になって分離したが、人々の心の中では分離しなかった。
磯田道史さんは、1212年鴨長明の『方丈記』「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という無常観。 日本三大随筆の一つ、世界的にすごい哲学。 京都の南、日野、1155~1216年、3m四方の方丈庵に暮らす。 1177年安元の大火、1181年養和の飢饉、1185年元暦の大地震が起こり、無常を感じた。 「その主と栖(すみか)と、無常を争うさま、いはば朝顔の露にことならず」「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまるためしなし。世の中にある人と栖(すみか)と、又かくのごとし。」 諸行は無常である、というのが仏教の根本。 無常感が、現実肯定を生む。 あきらめの中の、ポジティブ。
903年、菅原道真死去。 怨霊から、善神となって、947年、北野天満宮に祀られる。 立教大学の滝口正哉教授、神のルーツは江戸時代、百万都市江戸の賑わい、浅草寺は神仏のデパートで、境内に100以上ある。 かんかん地蔵(銭塚地蔵堂)は大日如来。 新宿、太宗寺の奪衣婆。 富士塚は200もある。 経済活動が活発になり、祈りのバリエーションが増えて、娯楽化、エンタメ化した。 葛飾区南蔵院の「しばられ地蔵」、大岡越前守の物語に始まる。 流行り神だらけ、楽しくなければ、信心じゃない。 実は、江戸時代も災害が多かった。 祈りの力は、医学でも働く、と山中伸弥さん。
陸前高田市は東日本大震災で、1800人超す死者、行方不明者を出した。 海岸山普門寺熊谷光洋住職のところに、全国から仏像が送られて来る、千体仏、マリア様まで、宗派を超えて…。 それぞれの人が、五百羅漢を彫ることで、ゆっくり立ちどまって考える。 気仙沼市岩井崎「龍の松」、津波で大きな被害を受けた松だが、大きく幹と折れた枝が、まるで龍の姿に見える。 磯田道史さんは、「幸(さきは)ふ」、先にはってのびてゆくのが幸い、祈ることだ、と。 タモリは、天に祈るのは、宗教じゃない、と。
「“ニッポンの祈り”、なぜ“神さま、仏さま”なのか」 ― 2026/05/07 07:08
NHK総合テレビ『タモリ山中伸弥の!?(#びっくりはてな)』、3月7日は「世界も注目“ニッポンの祈り”、なぜ“神さま、仏さま”なのか?」だった。 吉岡里帆、吉村崇(平成ノブシコブシ)。 初詣に8千万人~9千万人が出かける、日本人が祈る理由は何なのか。 1400万年前、紀伊半島に象やワニがいた頃、超巨大噴火があり、1千万年前までに紀伊半島の地形が形成された。 那智の滝、ゴトビキ岩など、巨岩、奇岩がある。 神戸大学の巽好幸教授(マグマ学)は、凝灰岩(火山灰が固まった)、花崗斑岩(マグマが固まった)で、依代(よりしろ)として自然を神として祀った。 古座川の一枚岩、高さ100m、幅500mの、一塊の岩。 こうした自然信仰は、恐山、立山にも。
中央構造線(まったく異なる地質が接する日本最大級の断層線)に沿って、上諏訪大社、下諏訪大社、豊川稲荷、伊勢神宮、高野山、石鎚山がある。 畏怖から祈りへ。 荒ぶる大地と共存する。 土地の神、外来の神、祖先の神、神話の神。
飛鳥時代、6世紀半ば、仏教伝来。 710年、平城京遷都。 734年、天平(6年)の大地震。 735年、疫病大流行。 岡山大学の今津勝紀教授(文明動態学研究所)、天平の大地震は『続日本紀』に記録があり、生駒断層帯の活断層が38㎞に渡り同時に動き、応神天皇陵とされる古墳が崩れた。 聖武天皇は4月7日に異常を感じた、震度5~6、中心部は震度7、大阪南部の狭山池の堤が崩壊し、平城京一帯に被害が出た。 聖武天皇は、「徳が欠けた、私一人の所為だ」とし、仏の力に頼るため、写経を命じた。 一切経、五千巻。 安民在業、及生類。 一年後、疫病が九州から都へ、三年間のパンデミックで、人口の1/3、100万人から150万人が死んだ。 天然痘か、はしかと考えられている。 名古屋市立大学の吉田一彦教授(日本宗教史)、聖武天皇は仏教に重点化し、全国に国分寺、国分尼寺を建て、東大寺の大仏を建立した。
磯田道史さんは、都には地震で全国から人が集まり、仏教では文字によってリアルに説明があり、そこに人はすがる。 人間が具体的にできることがある。
AIに代替され得ない人間の役割は何か ― 2026/04/30 07:06
「AI浸透「配転・人員減に影響」 活用前向きな企業2000社の半数近く」(朝日新聞27日朝刊)。 生成AI(人工知能)の広がりが働き方にどんな影響を及ぼすのか。 東京商工リサーチが約6300社を対象に行った調査で、AI活用に前向きな企業約2千社のうち半数近くが、今後5年で業務の効率化による「配置転換」や「従業員の抑制」を行う可能性があると回答した。 AIによる雇用への影響は、大企業のホワイトカラー層により大きく出るのではないか。 事務や企画などのオフィスワークをAIに代替させることで業務をスリム化し、その分の人材を営業力強化などに振り向けようとする動きも相次ぐ。
「防衛費増・AI活用 論点 安保3文書改定 有識者会議初会合」(朝日新聞28日朝刊)。 政府は27日、日本の外交・安全保障の基本方針となる国家安全保障戦略などの安保関連3文書の年内改定に向け、有識者会議の初会合を首相官邸で開いた。 高市早苗首相が掲げる「防衛力の抜本的強化」を進める狙いで、防衛費の増額やその財源のほか、ドローンやAI(人工知能)の防衛分野への活用などが主な論点となる。 ロシアのウクライナ侵略で注目を集めたドローンの使用やAIの活用といった「新しい戦い方」への対処や、武器の供給を絶やさずに戦闘を継続する「継続能力」の強化なども主な論点となる。
「AI活用で変わる戦争 人間の判断と責任 問い直しを」政治学者、谷口将紀さん(東京大学公共政策大学院長・教授)の『論壇時評』(朝日新聞29日朝刊)。 科学社会学者の横山広美は、完全自律兵器の開発や自国民監視といった「レッドライン」をめぐる攻防を描き、安全保障の領域では既存の規制が揺らぐ中で、技術開発者が倫理的な防波堤としての役割を担わざるを得ない現実を指摘する。(中央公論5月号) AIに代替され得ない人間の役割は何か。三菱総研の飯田正仁は、AIの進化が人間に残る役割をむしろ際立たせるとし、善悪の判断やプロセスの意味付けの重要性を強調する。(週刊エコノミスト4月14・21日合併号) 元人工知能学会長の松原仁もまた、AI時代の理想は人間の不要化ではなく、問いの設定や合意形成、責任の引き受けといった営みへと時間を振り向けることにあると説く。(Voice 5月号)
AI駆使のサイバー攻撃、金融への脅威は喫緊 ― 2026/04/29 07:04
「金融 新型AIから防御へ 担当相・銀行首脳 協議」、4月25日(土)の朝日新聞トップの見出しだ。 基幹インフラへの大規模なサイバー攻撃に悪用されかねない、米国新興企業アンソロピックが開発した新型AI「クロード・ミュトス」に対応するため、片山さつき金融担当相は24日、金融業界のトップらを集めた官民連携会議を開き、新たな体制づくりを決めたという。
「クロード・ミュトス」は、サイバー攻撃で「穴」となるソフトウェアやシステムの弱点を見つける能力を飛躍的に高めて、専門家が長年見つけられなかった弱点を簡単に見破ったという。 アンソロピックは、攻撃側の手に渡った場合に「サイバーセキュリティのあり方を一変させる」として一般公開を取りやめた。 米当局が米銀行大手首脳と緊急会合を開くなど、各国で緊張感が高まっている。
金融庁で開かれた官民連携会議には日本銀行の植田和男総裁、3メガバンクの頭取、日本取引所グループの首脳らが集まった。 AIを駆使したサイバー攻撃の脅威に対応するため、作業部会を官民会議の下につくることを全会一致で決めた。
会議後に取材に応じた片山さつき金融担当相は、金融システムへのサイバー攻撃について、「広がりが他の業界とは比較にならない。直ちに市場に影響し、信用不安まで波及し得る」と指摘、ミュトスを含むAIの脅威を「今そこにある危機」と語ったそうだ。
邦銀大手幹部は「攻撃を受け顧客情報などが漏洩すれば、システムをシャットダウンして、取引は全て現金でやりとりせざるを得ないかもしれない」と警戒する。 銀行業界はセキュリティ対策を急ぐが、のしかかる費用は膨らむばかりで、体力の乏しい地域金融機関はシステム投資についていけなくなるおそれもあるという。
AIを駆使したサイバー攻撃の脅威は、金融にとどまらない。 電力、通信、鉄道、空港などの基幹インフラが攻撃を受け、サービスが停止すれば、経済活動や日常生活に甚大な影響が及ぶ。
「AIと国家」、「国民監視への懸念」 ― 2026/04/28 07:12
4月6日の朝日新聞社説「AIと国家」の後半は、「国民監視への懸念」だった。 米新興企業アンソロピック社(ア社)が、国防総省との交渉で一致できなかったのは、「国民の大規模監視」の方だったという報道もある、という。
国防総省は、GPSの位置情報やネットの検索履歴、クレジットカードの利用履歴などの個人情報の分析にAIを利用することを求めたとされる。 ア社は声明で「個別には無害なデータでも強力なAIで自動かつ大規模に集めればあらゆる人の生活の全体像を捉えることができる」と指摘した。
こうした手法は「プロファイリング」と呼ばれ、人権やプライバシーの侵害に当たる恐れが強く、欧州連合のAI法では禁止されている。
朝日社説が、見過ごせないとするのは、すでにリアルタイムで情報収集が可能で、市民監視のルールとなりうることだ、とする。 電話やメールの傍受よりも強力な監視となり、政権に批判的な人を取り締まることもできる。 米国で現実味を帯びていることに深刻な危惧を覚える、という。
2023年にG7議長国だった日本が主導して立ち上げた「広島AIプロセス」では、法の支配や人権、民主主義などの価値観に基づいた施策やルール作りの検討が続く。 法的拘束力はないが、尊重すべき国際指針や行動規範が採択され、参加国は当の米国を含め66カ国・地域に増えた。 価値観を共有する国が連帯し、議論を継続していくことが必要だ。 企業やアカデミア、NGOも関わり、発信を続けていく必要がある、とする。
私は、当の米国の大統領、さらに覇権国のロシアや中国の首脳が、「法の支配や人権、民主主義などの価値観」を共有しているのかどうか、疑わしいところに最大の懸念があると思う。
最近のコメント