「AIと国家」、「国民監視への懸念」2026/04/28 07:12

 4月6日の朝日新聞社説「AIと国家」の後半は、「国民監視への懸念」だった。 米新興企業アンソロピック社(ア社)が、国防総省との交渉で一致できなかったのは、「国民の大規模監視」の方だったという報道もある、という。

 国防総省は、GPSの位置情報やネットの検索履歴、クレジットカードの利用履歴などの個人情報の分析にAIを利用することを求めたとされる。 ア社は声明で「個別には無害なデータでも強力なAIで自動かつ大規模に集めればあらゆる人の生活の全体像を捉えることができる」と指摘した。

 こうした手法は「プロファイリング」と呼ばれ、人権やプライバシーの侵害に当たる恐れが強く、欧州連合のAI法では禁止されている。

 朝日社説が、見過ごせないとするのは、すでにリアルタイムで情報収集が可能で、市民監視のルールとなりうることだ、とする。 電話やメールの傍受よりも強力な監視となり、政権に批判的な人を取り締まることもできる。 米国で現実味を帯びていることに深刻な危惧を覚える、という。

 2023年にG7議長国だった日本が主導して立ち上げた「広島AIプロセス」では、法の支配や人権、民主主義などの価値観に基づいた施策やルール作りの検討が続く。 法的拘束力はないが、尊重すべき国際指針や行動規範が採択され、参加国は当の米国を含め66カ国・地域に増えた。 価値観を共有する国が連帯し、議論を継続していくことが必要だ。 企業やアカデミア、NGOも関わり、発信を続けていく必要がある、とする。

 私は、当の米国の大統領、さらに覇権国のロシアや中国の首脳が、「法の支配や人権、民主主義などの価値観」を共有しているのかどうか、疑わしいところに最大の懸念があると思う。

AIの軍事利用「自律型致死兵器システム」への懸念2026/04/27 07:02

 朝日新聞4月6日の社説は、「AIと国家」「軍事利用と国民監視への懸念」だった。

「米国とイスラエルによるイラン攻撃は、米軍主導で人工知能(AI)が初めて本格的に使われた戦争として歴史に位置づけられるかもしれない。」「人間が処理しきれないような膨大なデータを高速で分析してパターンや関連性を見いだし、予測や識別を可能にする――これがAIの本質だ。」と書き出す。

 そして、昨日見た「メイブン・スマート・システム」のように、「人間が作業するよりはるかに素早い意思決定が可能にはなるが、当然ながらAIの精度には限界があり、致命的な誤りを犯す恐れもある。」とする。

 日本でもサービスを展開している、米新興企業アンソロピック社(ア社)のAIが注目されている。 国防総省と昨年、機密情報の分析に関する契約を結び、イラン攻撃でも使われたと伝えられている。 だが今年、米軍のベネズエラ攻撃でア社のAIが使われたと報道されて以降、国防総省とア社の対立が表面化。 2月末にダリオ・アモデイCEOが発表した声明によれば、国防総省は「合法的なあらゆる目的」での利用を求めたといい、ア社は民主主義の価値を損なう恐れがある例外として「国民の大規模監視」「完全自律型兵器」を挙げ、契約に含めない方針を表明した。 これが原因で契約は破棄となり、トランプ大統領が政府の調達から排除する意向を表明。 国家安全保障上の「サプライチェーン(供給網)リスクのある企業」に指定され、ア社が取り消しを求めて提訴する事態になっている。

 一連の出来事は、国家とAIの関係を考えるうえで重大な懸念を突きつける。

 ベネズエラ攻撃の前から「近年の紛争はAIを使った自律システムの実験場になっている」(グテーレス国連事務総長)と言われ、戦争の「質」を変えつつある。

 人間の関与が少なくなれば殺傷や破壊への抵抗が少なくなり、人間はAIの判断を追認するだけの存在になりかねない。 無人機のような兵器は製造や管理が容易な一方、先端技術を持つ大国間で覇権争いが熾烈化する恐れもある。

 ア社が声明で挙げたような「自律型致死兵器システム(LAWS)」については、日本を含め多くの国が規制の必要性を訴える。 国連や非人道的な特定通常兵器使用を禁止・制限する条約の締約国会議で、ルール作りの検討が続くが、定義すら定まらず、議論は遅々として進まない。

進化するAIで、戦争が恐ろしいことになっている2026/04/26 07:26

 小人閑居日記を書くときに、ChatGPTを使っているかといえば、まったく使っていない。 というより、なるべく避けている。 ただし、Googleの検索は使うから、自動的にAIによる解説がトップに出てくる。 例えば、「AIとは」と検索すると、「AI(人工知能)とは、人間の知的な能力(学習、推論、判断、言語理解など)をコンピュータで模倣・再現する技術です。膨大なデータからパターンを学ぶ「機械学習」が中心技術であり、自動運転や画像診断、文章生成など、人間の知的活動をし支援・代替して生活や業務を便利にするツールとして活用されています。Artificial Intelligenceの略」と。

 4月19日(日)の朝日新聞のトップは「AIの時代」で、恐ろしいことが書いてあった。 見出しは「米軍、イラン攻撃でAI使用か」「数秒で標的発見 戦争変えた」。

 AIの軍事利用は、「目」となる衛星画像技術の進化にも支えられている。 米衛星企業ブラックスカイは、地球軌道上に浮かぶ15基の衛星を管理。 同一地点を1日に10回以上撮影し、画像を高速で地球に送信できる。 これらの画像を独自開発したAIで分析する。 最新の衛星は、地上にある35センチ以上の物体なら形を判別でき、空から野球場の内野にいる人が認識できるほどの解像度を持つ。

 米国とともにイランを攻撃したイスラエルもAIを活用している。 地元メディア「Yネット」などによると、イスラエル軍はイランの最高指導者ハメネイ師を殺害するため、首都テヘランの交通監視カメラを数年にわたってハッキング。 護衛の状況や移動ルートを含めた情報をAIで分析し、動向を把握していたという。

 急速に進化するAIが、戦争のあり方を変えているという。 米国とイスラエルによるイランへの攻撃では、情報分析や標的の選定を担う「頭脳」としてAIが使われたとされる。 米データ解析大手パランティア・テクノロジーズのシステムでは、こんなことができる。 地球が映された衛星画像の中東地域を拡大していくと、〈左クリック〉途中から、ある島の施設を映したドローン画像に切り替わる。 〈右クリック〉止まっている車に番号が表示され、1台単位で認識しているようだ。 画面上で標的と攻撃方法を〈左クリック〉選び、「許可」というボタンを押すと、標的が爆破される映像が流れた。 標的の選定から攻撃までを、この一つのシステム、「メイブン・スマート・システム」で行えるのだ。 最近のテレビのニュースで、よく見る場面は、これなのだろう。

 米紙ワシントン・ポストは、米軍がイラン攻撃の最初の24時間で1千カ所を攻撃したと報道。 「メイブン・スマート・システム」が、「リアルタイムで標的や、攻撃の優先順位を決めるのに役立っている」とした。

MAGA MAGAしいアメリカ<等々力短信 第1199号 2026(令和8).1.25.>2026/01/25 07:26

 「まがまがしい」は「禍禍しい」と書く。 2026年はアメリカによるベネズエラ攻撃という衝撃的なニュースで始まった。 Make America Great Again 2期目のトランプ大統領の登場で、民主主義が試練にさらされている。 7日には66の国際機関(内31は国連機関)からの脱退または資金拠出の停止を表明、「国際法は必要ない」、米軍最高司令官としての判断は「自らの道徳観」にのみ制約されると言い、17日にはグリーンランド領有まで欧州8カ国に追加関税を課すことを発表した(21日に撤回)。 9月、国連総会での演説で「気候変動は世界が犯した史上最大の詐欺だ」、「国連には、生み出した移民による侵略をやめることが求められる。(移民は)国境を踏みにじり、主権を侵害し、止めどない犯罪を重ね、社会保障の安全網を使い果たす」と述べた。

 米NGO「フリーダムハウス」は報告書で、民主国家がどう権威主義に傾斜していくのか、四つの指標を示している。 (1)権力者が司法の独立を弱めるなど「法の支配の弱体化」。(2)不透明な資金調達や選挙規則の操作など、公正・中立な選挙への疑念。(3)ジャーナリストへの攻撃や情報へのアクセス制限など、「報道の自由への攻撃」。(4)社会的弱者が直面する「移民への差別・不当な扱い」。 大学や言論機関への攻撃が忌まわしい。 14日には、FBIがワシントンポストの記者の家宅捜索をした。

 私は昭和16(1941)年に生まれ、4歳の時、小泉信三さんも被災した東京城南の空襲で、9月に洪水のあった立会川の橋の下で一晩を過ごして、助かった。 それが戦後、六三制の初期に民主主義教育を受け、物心がつくと、映画や音楽でアメリカ文化をもろに浴びて、アメリカは理想の国となって、空襲の恨みなどは感じたことがない。 大学時代は、ちょうどJ・F・ケネディ大統領の時世に重なり、その著『勇気ある人々』では自分の信念を貫いた議員たちの物語を読み、子供たちが身近な疑問や要望を直接大統領に手紙を書いて送った本では、その大統領職に対する尊敬に彼我の差を感じた。

 福沢諭吉は、『文明論之概略』で「権力の偏重」を言った。 西洋の文明では相互に拮抗する諸勢力の対立の中に自由を生じたが、日本では強者と弱者が不均衡に固定化してしまったことが文明を阻害した、と。 今日のアメリカにおける「権力の偏重」は、11月の中間選挙でチェックされるのか。 『学問のすゝめ』に、「理のためにはアフリカの黒奴にも恐入り、道のためには英吉利亜米利加の軍艦をも恐れず」、「人智愈(いよいよ)開(ひらけ)れば交際愈広く、交際愈広ければ人情愈和らぎ、万国公法の説に権を得て、戦争を起すこと軽率ならず」とあり、だが『通俗国権論』では「百巻の万国公法は数門の大砲に幾冊の和親条約は一筐の弾薬に若かず」とも言っていた。

伊藤公平塾長の年頭挨拶、前半2026/01/15 08:29

 1月10日は、第191回の福澤先生誕生記念会で、三田へ行った。 私の唯一の自慢、1960(昭和35)年に第125回の福澤先生誕生記念会が大阪で開催されたのに、志木高から行かせてもらったのは3年生の18歳、66年前のことだった。 1901(明治34)年2月3日に福沢先生が66歳で亡くなってから、今年は没後125年になる。 先生より18年も余計に生きて、小人閑居、何もできずにいるのが、どうにも恥ずかしい思いがする。

 伊藤公平塾長は、年頭挨拶の冒頭、「慶應義塾の年末年始はコレだった」として、花園で活躍した志木高蹴球部のタイガージャージー色の応援タオルを掲げ、拍手を受けた。 12月27日の青森山田との一回戦を、塾長が花園で応援したと聞いている。(全国高校ラグビー一回戦、慶應志木48対12で青森山田に快勝<小人閑居日記 2025.12.29.>、全国高校ラグビー慶應志木高、東福岡高校に善戦健闘<小人閑居日記 2026.1.2.>)

 塾長は、昨年、世界のリーダーたちが慶應義塾を訪れたが、それは塾に会いたくなる教授、研究者がいるからだ、と言う。 歴史の厚みがあり、これからにも期待している。 7月、1875(明治8)年の開館から150年になる三田演説館で、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州連合(EU)委員長がスピーチした。 福沢の説いた「自由と独立」は、19世紀と今日をつないでおり、現在の課題の大切な答だというのだった。(慶應義塾が名誉博士号を授与したEU委員長<小人閑居日記 2025.11.14.>、福沢の「自由」と「独立」の追求は、現在の課題の答<小人閑居日記 2025.11.15.>、欧州と日本のパートナーシップ、学生へのメッセージ<小人閑居日記 2025.11.16.>)

 11月、ICC国際刑事裁判所(赤根智子所長)のアジア太平洋学術フォーラムを慶應義塾で開催、アジア太平洋地域の10の大学が集い、国際刑事司法の地域連携、学術的立場から「自由と独立」を協議した。 ICCはプーチン氏やネタニヤフ氏など、戦争犯罪者に逮捕状を出している。 この問題は、19世紀末に重なる。 福沢は『文明論之概略』で、愚かな者に権力を与えると、どんなことも出来るといい、目的を定めて文明に進むの一事、内外の、明らかな独立を説いた。 智徳の進歩に、四章を割いている。 智恵では西洋に立ち遅れている、五官で感じ、好奇心を持って研究、探究するのが大事。 役立つものは受け入れ、害するものは外す。 学問、文学は心を和らげる。 歴史は、今後を明らかにする。

 当時の日本は、外国交際病、貿易の搾取、「利を争うことは古人の禁句なれども、利を争うは即ち理を争うことなり」、外国人は利益を求めて、理屈を出してくる。 一人、一人の能力を高める必要がある、「一国の人民として地方の利害を論ずるの気象なく、一人の人として独一個の栄辱を重んずるの勇力あらざれば、何事も論ずるも無益なるのみ」。 昨今の国際情勢、利と理を考えないと、弱肉強食の世界になってしまう、現在進行形の問題である。(この部分は、安西敏三甲南大学名誉教授が、あとの記念講演「福澤諭吉の智徳論―J・S・ミルとの関連を中心に」で、述べたことと一致していたので、それで補った。)