等々力短信 第1165号は…2023/03/25 07:20

<等々力短信 第1165号 2023(令和5).3.25.>名和未知男句集『妻』 は、3月20日にアップしました。 3月20日をご覧ください。

「エンジョイ・ベースボール」「ワン・チーム」のWBC2023/03/25 07:13

 第5回WBCワールド・ベースボール・クラシック、日本代表「侍ジャパン」は21日(日本時間22日)の米マイアミのローンデポ・パークでの決勝で、前回優勝のアメリカを3-2で破り、14年ぶりに世界一を奪還した。 東京ドームでの1次リーグ、9日中国を8-1、10日韓国を13-4、11日チェコを10-2、12日オーストラリアを7-1と破り、16日の準々決勝はイタリアを9-3、アメリカに渡って20日(日本時間21日)の準決勝メキシコを6-5と、一度も負けなかった。 この大会をずっと見ていて、堪能したのはもちろんだが、この結果を見て、これは慶應義塾野球部の「エンジョイ・ベースボール」、2019年ラグビーワールドカップ日本代表のスローガン「ワン・チーム」ではないか、と感じたのだった。 みんな楽しそうにやっていたし、チームとしてまとまっていた。

 投打二刀流の大谷翔平(エンゼルス)は試合終盤、ベンチと外野のブルペンを往復して、登板に備えた。 8回ダルビッシュ(パドレス)がシュワバー(フィリーズ)にホームランを打たれ、3-2と一点差に迫られた。 9回、マウンドに上がった大谷、四球を許したがダブルプレーで2アウト、エンゼルスの同僚で、大リーグで歴代10指に入るとも言われる強打者で主将のマイク・トラウトを打席に迎える、漫画か映画のような展開になった。 フルカウントから、鋭く曲がるスライダーで空振りの三振、大谷は帽子もグラブも投げ捨てて、駆け寄る仲間たちと優勝の歓喜に雄たけびを挙げたのだった。

 決勝でアメリカに勝つのは初めて、MVPにも選ばれた大谷翔平は、「日本の野球が世界に勝てるんだという。みんなが一つになって、本当に楽しい時間でした。」「野球を楽しんでいる次の世代の子たちが、僕らも頑張りたいと思ってくれたら幸せです。」 つぎの2026年大会にも、出たいか聞かれ、「出たいですね。そうなるよう最善の努力を毎年したい。」と話した。

 帰国直後、テレビ朝日「報道ステーション」での栗山英樹監督の話がすばらしかった。 ダルビッシュにも、翔平にも、決勝戦で投げてくれとは、言わなかった。 翔平には、アマノジャクなところがある。 本人たちが投げると言ってきた。 「やってくれると信じている。」 「僕はそんなに能力がある人間ではない。ただ唯一できるのは、誰よりも情熱を持ってやること。できることはそれしかない。」

チャンピオンのTシャツを着た栗山監督と、牧原大成(ソフトバンク)が、二人で話している映像が流れた。 牧原がお辞儀をし、栗山監督は牧原の目を見ながら、何か話していた。 牧原は、激闘の準決勝のメキシコ戦で、野手全員が試合に出たのに一人だけベンチにいた。 決勝戦では試合終盤、吉田正尚(レッドソックス)に代わってセンターに入り、ラーズ・タツジ・ヌートバー(カージナルス)がレフトに回った。 栗山監督はその映像を見て、相手の目を見ながらのコミュニケーションが大切だと語っていた。

自分で出来立てを作る、餡と最中の皮のセット2023/03/24 06:57

 自由が丘の蜂の家で「おはぎ」を買った時、少し並んでいたので、いつもと違う店の中に回り、偶然、「あん場のつまみぐい」という壜と、最中の皮のセットになったのを見かけた。 壜の中は粒餡(あん)で、どうやら「あん場」は餡場、餡をつくるところで、作っている最中に、つまみぐいしたくなるほど、美味しいということらしい。 昨年秋の朝ドラ『カムカムエブリバディ』では、岡山の和菓子屋に育った主人公安子が、子供の頃から「おいしくなーれ、おいしくなーれ」と、心をこめた呪文を唱えながら餡こを炊いてゆくのを見てきたことが、物語の中心に流れていた。

 下戸で、甘いものには目がない方なので、餡と最中の皮を別々にしてセットで売っていて、自分で食べる時に最中にすると、出来立てでパリパリして美味しいことは知っていた。 鶴屋八幡の百楽にも、塩瀬総本家の袖ケ浦最中にもある。 袖ケ浦最中は、九代目市川團十郎の考案・命名によるので、一名團十郎最中ともいうらしい。 それで「あん場のつまみぐい」を買ってきたのだが、蜂の家の粒餡はなるほど美味しいけれど、最中の皮が繭の形で小さくて割れやすく、感心しなかった。 もっとも、餡はトーストやお餅に合わせても美味しいと、説明があったが…。

 餡と最中の皮のセット、私のお勧めは、塩瀬総本家の袖ケ浦最中である。

春の彼岸は「牡丹餅」で、「御萩」は秋か?2023/03/23 07:01

 お彼岸なので、自由が丘の蜂の家で「おはぎ」を買ってきた。 先日、テレビで、「おはぎ」は「お萩」だから秋の彼岸、春の彼岸のものは牡丹の「ぼたもち」と言わねばならない、と言っていた。 でも「ぼたもち」というと、何かぼってりした大きめの感じがしていた。

 そこで、『広辞苑』を引いてみる。 「おはぎ【御萩】「はぎのもち」の別称。」 「ぼたもち【牡丹餅】(1)(赤小豆餡をまぶしたところが牡丹の花に似るからいう)「はぎのもち」に同じ。(2)女の顔の円く大きく醜いもの。(3)円くて大きなもののたとえ。」

そこで、「はぎのもち【萩の餅】」も、見てみよう。 「糯米(もちごめ)や粳米(うるちまい)などを炊き、軽くついて小さく丸め、餡(あん)・黄粉(きなこ)・胡麻などをつけた餅。煮た小豆を粒のまま散らしかけたのが、萩の花の咲きみだれるさまに似るのでいう。また牡丹に似るから牡丹餅(ぼたもち)ともいう。おはぎ。はぎのはな。きたまど。隣知らず。萩の強飯(こわいい)。」 季節についての言及はなかった。

ついでに、「きたまど【北窓】(1)北側の窓。(2)(北窓の「つき(月)入らず」を「つき(搗)入らず」にかけた意という)萩の餅の異称。」

さらに、「隣知らず」は「となりしらず【隣知らず】(1)牡丹餅の異称。(嬉遊笑覧)(2)手軽に婚礼をととのえること。(俚言集覧)」

 俳句では、「彼岸」を「春分の日を「お中日」とした前後三日ずつの七日間」といい、秋分の日を中心とした秋のそれは「秋彼岸」または「後の彼岸」という。 歳時記をざっと見たところ、「牡丹餅」や「御萩」は見つからない。 『ホトトギス 新歳時記』に「彼岸詣」という季題があり、傍題として家々では「彼岸団子」を作る、とある。 『合本 新歳時記』(角川書店)では、「彼岸会」の傍題に「彼岸団子」「彼岸餅」があり、<彼岸牡丹餅木曽義仲の墓前かな 下田 稔><海に出づ彼岸の餅を平らげて 中 拓夫>という例句があった。

渋谷・明治通り、並木橋までの並木「陽光桜」2023/03/22 07:02

 4、5日前のテレビのニュースで渋谷・明治通りの「陽光桜」が咲き始めたというのをやっていた。 毎月、『夏潮』渋谷句会で、渋谷駅から並木橋の渋谷区の施設リフレッシュ氷川の会場まで往復する道の並木である。 色の濃い桜が咲いているのを見たことがあって、きれいだとは思っていたが、「陽光桜」だとは知らなかった。

 「陽光桜」については、一昨年ジョルジオ・アルマーニ銀座タワーのエントランスに飾ってあるのを見て、アルマーニ銀座タワーの陽光桜<小人閑居日記 2021.3.19.>を書き、写真も出していた。 そして、こう書いていた。

 陽光桜、知らなかったが、愛媛県の高岡正明という人が、アマギヨシノとカンヒザクラを交雑させてつくった栽培品種だそうだ。 高岡正明さんは、第二次大戦中、青年学校農業科の先生で、「お国のために戦って来い、そしてまたこの桜の木の下で会おう」と教え子たちを送り出したが、その多くが帰って来なかった。 そして戦死した教え子たちの冥福と平和とを祈って、各地に桜を贈ることを思い立ち、環境適応能力の強いサクラをつくろうと、25年間の試行錯誤の後に、寒さに強い日本のソメイヨシノ(染井吉野)に由来を持つアマギヨシノ(天城吉野)と、台湾もしくは日本の暑さに強いカンヒザクラ(寒緋桜)を交雑させてヨウコウ(陽光)を誕生させた。 樹形は広卵状で、ソメイヨシノより早く咲き、花は一重で大輪、鮮やかなピンク色が特徴。

 2015年には、高岡正明さんがヨウコウを誕生させた物語を描いた、高橋玄監督・脚本、笹野高史(『釣りバカ日誌』の運転手)主演の映画『陽光桜―YOKO THE CHERRY BLOSSOM』が公開された。 シンガーソングライターの茜沢ユメルはこの誕生秘話を後世に伝えるため、2013年に「Stay~さくらの花のように」「夢桜~あなたの希望になる~」を、2018年に「風になって花と踊ろう」「さくら」「陽光桜~あの時の教え子たちへ」をリリースし、2017年には茜沢が初監督を務めたインディーズ作品『陽光の木の下で』が、豊洲の新人監督映画祭で上映されたという。 どちらも、まったく知らなかった。

 ネットを「渋谷明治通り 陽光桜」で検索したら、下記「くまぽのブログ」に2021年の写真があった。 https://ameblo.jp/kumapo01/entry-12661807315.html