三笑亭夢丸の「壁金」 ― 2026/07/12 07:49
夢丸、ニコヤカに登場。 この「壁金」(かべきん)という噺は、都家歌六師匠が一手販売していた噺で、自分が知っている頃は、落語はやらず巨大なノコギリで「のこぎり音楽」(ミュージッソー)をやっていた。 新宿の末広で前座をしていたら、次は浅草なので、届けてくれと言われて、巨大なノコギリを背負って行ったことがある。 街中を、そんな恰好で歩くので、職務質問され、何だ? と聞くから、楽器だと答えたら、警察に連れていかれた。 当時は、落語はやらず、色物屋というジャンルだった。 ただ、着物の上に、扇子と手拭だけはきちんと用意していた。 カセットテープの音楽を流して、ノコギリを弾くのだが、池袋で、器械の調子が悪く、音楽が鳴らない。 前座さん、扇子と手拭をと言うので、落語をやるのかと思ったら、女の子が立小便するという踊りを踊った。 色物のジャンルを守ったんでしょう。 二十ぐらい上の橘ノ円満師が若い頃、晩年にやっていた「壁金」を聞いたことがあるっていうので、教えてくれませんかっていったら、教えてくれた。
商売は、なんでも大変なものだが、出商人(であきんど)の飴屋が、金太郎飴を売っていた。(と、羽織を脱ぐ) 「チチンチン! 金太さんと、オタさんが、飴の中から飛んで出たよ!」 お前は、いったい何屋だ? 飴屋でございます。 俺は酔っ払いだ、もう一度、売り声をやれ。 買わないんでしょ。 早く、やれ! 公園に面して、無駄な空き地になっている。 やれ! やります。 「チチンチン! 金太さんと、オタさんが、飴の中から飛んで出たよ!」 いやいやでなく、元気に、一生懸命にやれ! (大声で)「チチンチン! 金太さんと、オタさんが、飴の中から飛んで出たよ!」 ウルサーーイ! びっくりするじゃないか。 有難うございます、俺の願いを容れてくれ、まことに申し訳ない。 大丈夫、気にしていませんから。 (酔っ払いは、手をついて)許して下さるんですか。 はい、許します。 エッ、許してもらうような悪い事を、俺が何した? もう一度、やれ!
(中ぐらいの声で) 「チチンチン! 金太さんと、オタさんが、飴の中から飛んで出たよ!」 失礼な奴だ、誰に断わって、その売り声をやっているんだ、俺の本名で…。 本名? 左官の金太、大田金太郎だ。 助けを呼ぶんじゃないぞ。
あれは金太の奴だな、飴屋にからんでいる。 すまなかったな、これ、取っといてくれ。 おい、飴屋、何かもらったな、売り声をやれ。 「チチンチン! 金太さんと、オタさんが、飴の中から飛んで出たよ!」 やめろ、歩けない。 肩貸してやってやる。
お兄ィさん、ウチの人、どこへ行ったか、知らないかい。 それウチの人じゃ、ありませんか。 お兄ィさんに、おぶわれて。 酒癖が良くない、考えた方がいい、スパッと別れたらどうだ。 でも、素面(しらふ)の時は、優しい。 私も若かったら、お兄ィさんと、一緒になりたかった。 俺だって、お前たちが一緒になった時は、悔しい思いをしたんだ。 何だい、家の前で、イチャイチャしやがって。 兄ィも、亭主の前で、くどいて! 二人は、できてるな! 兄イが怒って、金太の帯を持って、うっちゃると、金太は長屋の壁を突き破って隣の家へ飛び込んだ、 隣の婆さんが顔を出し、「金太さんが、壁の中から飛んで出たよ!」。
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