五街道雲助の「宮戸川」下2026/07/20 07:25

 面白い話がある。 去年の、今頃のことだった。 わっちと、舟をやってる留の野郎と三人で、雷門に雨宿りした。 つまらねえ話をするんじゃねえ、ほかの話をしろ。 黙っておいで。 いつも三人で話をして、生涯に一ぺん震い付きたくなるようないい女を抱いてみたいなんて、言っていたんだ。 土砂降りの中、雷が近場に落ちて、雷門で、二十一、二のいい女が目を回して倒れた。 それから介抱してやろうということになって。 つまらねえことを言うな、旦那、こいつは千三つって言うんですよ。 千三つという、三つの内の一つだ。

 いい女でね、それから、すっかり介抱をしてやろう、強淫をしようてんで、男三人で引っ担いで行く。 路地から路地へ、石置場まで引っ担いで行って、いい想いをさしてもらうことにしました。 この野郎がまず慰んで、もう一人が慰み、そして三人目のわっちが、取りかかろうというところで、女が息を吹き返した。 お前は、亀じゃないか、と言う。 その女、前に働いていた日本橋小網町の船宿桜屋の一人娘で、お花。 主人筋に当る女でしたから、驚いた。 それから、名前を知っていられちゃあ、三人の素っ首が飛ぶ仕事だ、じたばたできないように、二人が押えて、あっちは両手で縊(くび)れ殺して、ドボンと投げ込む宮戸川。 その水しぶきが、今でもまぶたに残っている。 馬鹿を見たのは、わっち一人で。 どうか、お察しを。

 これは、これは、面白いお話を、伺いまして。 ド、ドンドン!(柝(き)が入って、芝居がかりに)去年六月十七日、女房お花、二十が上に二つの女の盛り、雷門で篠突く雨に雷で気を失い、手慰みにされ、気が付いたのは、運の尽き、知れぬも道理、ドボンと投げ込まれて、宮戸川の水煙。 さては、その日の、悪人はわいらのことであったか。 これですっかり知れたわい、良い所で、悪い所で、会うたよなあ!

 旦那様、旦那様! なんだか、ひどくうなされてました、悪い夢をご覧になったんじゃありませんか。 定吉か。 傘を取りに参りました。 夢は五臓の疲れか。 いいや、小僧の使いだ。