林家正蔵の「田能久」前半2026/07/16 07:19

 正蔵、見かけが少し年取った感じがした、尻の下に何か敷いた。 三遊亭歌武蔵とは、ドリームジャンボ仲間。 歌武蔵、橘家文蔵、林家彦いち、西日の差す上野鈴本の楽屋に、ランニングシャツ、ステテコでいる。 パッと入ったら、刑務所。 文蔵が、正兄貴12億円当たったらどうする? と、聞く。 文ちゃんは? 当たったら決めてる。 要町(豊島区)の汚いマンションにいるの知ってるんで、タワマン買うのか? 俺、寄席の代演に行かない。(2千円~3千円)。 噺家らしい。 彦いちは、兄貴なさけねえ、俺は夢が大きい、学校寄席へ行かない(5万円~7万円)。 歌武蔵は、なさけねえよ、俺は人に使う。 落語協会、落語芸術協会、三遊派、立川流から上方まで、噺家をみんな集めてご馳走する。 どこで? サイゼリヤ。

 阿波徳島の田能村に久兵衛さんという親孝行の人がいて、大の芝居好き。 村芝居の座頭になって、田能村に久兵衛だから、田能久一座、伊予の宇和島に呼ばれて出かけた、おっ母さんを頼みますと、家に残して。 連日大入り満員、大盛況だったが、五日目におっ母さんの具合が悪いという手紙が来た。 後をまかせると、久兵衛さん阿波徳島へ帰ることにした。

 法華津峠を越え、鳥坂(とさか)峠にかかる茶屋で渋茶をすすっていると、どこから来たと聞かれる。 徳島から来て役者をしている、国に帰るので、これから峠を越えると話すと、鳥坂峠にはウワバミが棲んでいるので、行っちゃあならない、と止める。 しかし敢えて山の中に入ると、日が暮れてきた。 ポツポツと降り出し、盆を返したような雨になった。 小さな掘立小屋、炭焼きの小屋らしいのを見つけて、地獄に仏だと、入る。 真っ暗、囲炉裏があったので、持っていた紙に火打石で火を熾す。 あーー、助かった、腹が減っているのを思い出す。 おむすびを二つ食って、ウトウトする。

 生臭い臭いがして、八十ぐらいの一人の老人が、長い白髪で、杖をついて、目をギョロギョロさせている。 小屋主さんだ、寝たふりをすべえ。 起きろ、おい! 目を開けて、イビキをかく奴があるか。 勝手に、小屋を使ってまして、許して下せえ。 村の者に、何か言われなかったか? 峠にはウワバミが棲んでいるので、行っちゃあならない、と止められた。 道理で、誰も来ないわけだ。 危うく、味を忘れるところだった。 人間の味を。 アワ様、これから母親が病気の国へ帰るところなんで、勘弁して下さい。 アワ様なんて、領収書の宛名じゃない、裸になれ、口の中に飛び込め! おっ母さんの具合が悪いんで、許して下せえ。 この世の名残りに名前を聞こう。 タ、タ、タ…。 江戸家猫八か。 タ、ノ、キュウ! お前、狸か。

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