桂二葉の「くしゃみ講釈」後半 ― 2026/07/14 07:19
胡椒は百、仕入れてあったんだが、売り切れてたの、昨日からわかってた。 面白くない野郎に、火鉢にくべて、いぶして、くしゃみをさせようってんだ。 胡椒のほかに何かないか? それだったら、唐辛子(とんがらし)でやってみたら、どうだ。 唐辛子の粉、二銭下さい。 あんた、唐辛子の粉二銭買うのに、覗きからくりを一段語ったのか、あんた、今どきの人やおまへんな。 なんや、こんな仰山、人が集まって。 続きが聞きたい、いつ、やるんだ。 明日、この時刻で。
遅かったな、何やっていたんだ。 胡椒を忘れて、覗きからくりを一段語ったんで、ちょっと長くなった。 「ハーーイ!」って。 店先で、一段やったのかい。 八百屋お七の、長い文句を覚えていて、ようやく駒込吉祥寺の小姓吉三で、胡椒を思い出して、大笑い。 八百屋も、あんた、今どきの人やおまへんなって、褒めてくれた。 それは、褒めたんやない。 胡椒が売り切れで、唐辛子の粉を二銭買うてきた。
講釈小屋。 前の方へ行こう。 見やすいところへ。 聴く気か? おい、お前、おさまってないで、肝心のものをもらえ。 何や? 火鉢をもらえ。 そうだった。 ハイ、ハーイ! 姐さん、火鉢を、火を仰山入れて。 寒いわけじゃない、唐辛子の粉入れて、扇ぐんだ。 先生、まだ、出てきていない。 鼻つまんで、扇ぐ。 何、してんの、お前は、俺で試すな、ハッ、ハッ、ハックション。 ばっちりや。
講釈師、お早々とお詰め掛けのところ、浪花戦記を申し上げます。 元和元年、大坂城へと押し寄せる関東の軍勢は5万3千…。 おい、何してんねん。 講釈、聞いてんねん。 馬鹿。 思い出した、扇子で扇ぐんだ。 扇げ、扇げ、黄色い煙が出る、あの団子っ鼻に向って。 その日の出立ちは、金覆輪の……、エエエ、イハハ、ハックショイ、やあやあ、遠からん者は、我こそは、ハッ、ハッ、ハックション。 失礼、うたた寝をして、風邪を引いたのか、ハッハッハ、ハックション! 下では、アホが一生懸命になって扇ぐ。 ウッハッハ、我こそは……。 ハックション、ハックション、ハックション!
もう、やめます。 今日のところは、お引き取りを願って。 毒づくんだよ。 くしゃみを聞きに来たんじゃない。 くしゃみばかりして講釈読まなきゃ、講釈師じゃないだろう! 何か、故障がありましたか。 胡椒がないから、唐辛子をくすべたんや!
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