春風亭一之輔の「松竹梅」後半 ― 2026/01/22 07:07
隠居さん、何か教えて下さい。 謡の真似事はどうだ。 松さんが「なったなったじゃになった、当家の婿殿、じゃになった」、竹さんが「何じゃに、なあられた」、梅さんが「長者になあられた」とやるんだ。 笑いはいらない、目出度いことになる。 それ、教えて下さい。 婆さん、白扇を持って来い。 早く、婆さん! なんだい、ウチの婆さんだよ。
背筋を伸ばして、少し上を向く、鴨居のあたりを見るんだ。 「なったなったじゃになった」、謡の調子だ。 「何じゃに、なあられた」、「長者になあられた」。 豚が喘息患ったような声だな。 満座でこれやるんですか、義理でやります。 目八分、目八分、鴨居の方を見ろ。 「ヨッ、ナッ、ナッ、ナッ、ナッツ、ナッツ、ノコッタ、ノコッタ」。 そこで、取組を始めるな、座ってろ。 間にツを入れて、伸ばしてごらん。 「ナット、ナット、ナットー、ナットー」。 下腹に力を入れて、肩の力を抜いて。 出ました、臭い! 何、食ったら、こんな匂いになるんだ。 力を抜いて、伸ばし気味に。 「ナッターナッタージャニナッター」。 今のが、一番いい、それでいい。
竹さん。 爺さんが義太夫を稽古していたんで、うまく出来る。 デデン! 三味線が入らないと駄目。 「ナニジャニ、ナアーラレタ」。 ちょっといいのが……、腹から出して。 「デデン! デデン! ナニジャトイエバ、ババサマ、鞍馬の大蛇、ウワバミが…」。 勝手な話にすんな。 梅さん、「長者ニ、ナラレタ」だろ。 歴代の横綱は言えても、短いのは駄目。 「長者ニ、ナラレタ?」 疑問形は駄目、言い切ろう。 「長者ニィ、ナアラレタ」。 外人風、最後のが一番いい。 そこで、梅さんが口上を言う、「長者になりまして、おめでとうございます」と。 家に帰って、よく稽古してやれ。
婚礼も盛り上がって来た。 早くやろうよ、何を食っても、美味くないんだ。 挨拶をしろ。 皆さん、こんにちは。 余興だ。 松太郎、竹三郎、梅吉、三人で祝儀をつけてくれる。 竹、そこじゃない。 今日は、おめでとうございます。 「ナッ、ナッ、ナッ、ナッツ、ナッツ」、どうしても「ナット、ナット、ナットー」になる。 力抜いて気楽に、「ナッターナッタージャニナッター、当家の婿殿、じゃになった」。 「何じゃに、なあられた」。 梅! ウン、忘れちゃった、代りにやってくれ。 無理だよ。 自分のしか、覚えてない、思い出せ。 梅、泣くなよ。 デデン! で、つなぐから。 「ナニジャと名乗れば、山中、ウワバミ、大蛇になられた」。 鳥居、賽銭箱。 「神社になられた」。 伊賀。 「忍者になられた」。 「亡者になられた」。
お開きになって、ご隠居さん。 その顔じゃあ、大しくじりだな。 それが洒落の分かる人がいて、「神社になられた」と、横綱の言い立てが受けて、二人はまだ向こうで踊ってますよ。 よかったね、無事にお開きになって。
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