名和未知男さんの第四句集『草の花』2018/02/12 06:40

 「草の花」主宰の名和未知男さんから第四句集『草の花』を頂いた。  藤田あけ烏師が平成5(1993)年に創刊した「草の花」は来月25周年、平 成16(2004)年に師の逝去で主宰を引き継いだ名和未知男さんの在任期間の 方が長くなったという。 平成17(2005)年に第一句集『くだかけ』を頂い て、以下を書いていた。

  名和未知男さんの第一句集『くだかけ』<小人閑居日記 2005.5.21.>

「歩く俳人」の海外詠<小人閑居日記 2005.5.22.>

孫の句、母の句、そして…<小人閑居日記 2005.5.23.>

 さっそく、『草の花』を拝読、好きな句を15句選んでみた。

  日本海の風待ち港蜆汁

  野火止に水分かれゆき水温む

  惜春やダークダックス同世代

  啓蟄や砂蒸し風呂に身じろがず

  白茅(ちがや)咲き母に会ひたくなりにけり

  風のやうに生きたし柳絮飛ぶ日なり

  朝凪や鳥海山は海に浮き

  喝と一声禅堂の五月闇

  阿川さんの墓標と仰ぐ雲の峰

  独り言です返信不要秋の宵

  月明に鳥海山は孤なりける

  秋うらら女は道の駅が好き

  日本海の魚みな旨し時雨空

  山眠る炭焼きのこと絶えし山

  冬の田や影を持ちたる藁ぼつち

「初句会」と「探梅」の句会2018/01/19 07:14

 1月11日は『夏潮』渋谷句会だった。 主宰が入院中で、今月も後選(あと せん)を頂く。 兼題は「初句会」と「探梅」、私はつぎの七句を出した。

一句一句祈る思ひの初句会

初句会平和は七十三年目

ことのはのたすきつなげる初句会

水の音風の音聴き初句会

探梅や郊外電車停留場

探梅行墓場の裏に出てをりぬ

急坂をやうやく登り梅探る

 私が選句したのは、つぎの七句。

授かりし一句温め初句会      なな

あらたまることも楽しき初句会   裕子

鉛筆を削り直して初句会      善兵衛

夕飯は手抜き料理や初句会     淳子

探梅や久寿餅買うて戻りける    和子

ひつそりと局の御墓所梅探る    なな

探梅すいつもの道をちよとそれて  さえ

 私の結果。 互選は<ことのはのたすきつなげる初句会>を正紀さん、<水 の音風の音聴き初句会>を庸夫さん、<探梅や郊外電車停留場>を耕一さん、 <探梅行墓場の裏に出てをりぬ>を盛夫さん、<急坂をやうやく登り梅探る> を淳子さんが採ってくれて、五票。

 今年もちょぼちょぼのスタートかと思っていたら、主宰の後選に以下の五句 が入って、たちまちバラ色、「こいつぁ春から縁起がいいわい」となったのであ った。 句会で<初句会一喜一憂せぬやうに>という句をお詠みになった方が いたが、こちとらは喜寿にして凡夫、死ななきゃあ直らないらしい。

 <一句一句祈る思ひの初句会>、<初句会平和七十三年目>(原句・初句会 平和は七十三年目)、<探梅や郊外電車停留場>、<探梅行墓場の裏に出てをり ぬ>、<急坂をやうやく登り梅探る>。

俳句「口も手も」狭き庭父が先頭四方拝2018/01/01 07:21

 明けましておめでとうございます。 平成30年の元旦です。 毎年元日に ご覧に入れている自作の俳句、俳誌『夏潮』一月号の親潮賞応募作、題して「口 も手も」です。 昨秋、父の二十三回忌を修しましたが、いろいろと父のこと を思い出してつくったものです。

狭き庭父が先頭四方拝

書初や遠く及ばず父の手に

五十で隠棲狩猟三昧の夢

品の良き源平の斑や肥後椿

花筏大川端の商業出

江戸川や和船を漕いで投網打ち

鳥海を望む青田に画架を立て

巻藁前壮年の父汗かきて

口も手も泉こんこん芝育ち

烏賊のごと斜交ひに行く古泳法

夏休みの工作に過ぎ父の腕

湯上りの父ぱたぱたと天瓜粉

銀ブラの街頭写真白い靴

からからに乾して朝顔水をやれ

お仲間と画廊に並べ敬老日

鯊釣や大いなる物飛ぶ下で

道元の暗誦自慢秋彼岸

ツイードのジャケットで行く三の酉

悴んで秩父夜祭山車を描く

明けぬ夜はないと父言ふ年の果

 この二十句以外にも、つくっていたので、おまけ。

竹馬や言ふ「痛いのは自分持ち」

度毎に筆とパレット洗ひをり

父帰り土産の螢蚊帳の中

硝子熔かす家業を畳み子の昼寝

「蕪(かぶ・かぶら)」の雑学2017/12/31 06:38

 「蕪」と「ちゃんちゃんこ」の句会では、季題研究の当番だったので、「蕪」 を選んで報告した。 「蕪(かぶ・かぶら)」、何気なく食べているが、調べて みると面白いことがわかったので、雑学風の話をさせてもらった。

 ○肥大した球形の根を食べるが、この部分は発生学上「胚軸」とよばれる部 位で(モヤシなどもそう)、本当の根はその下に伸びたひげ状の部位に相当する。

 ○関東では小蕪(金町小かぶが通年栽培可能で、最も生産量が多い代表的品 種)が、関西では中蕪(天王寺かぶ等)・大蕪(聖護院かぶ等)が利用されるこ とが多く、東北地方には長蕪が多い。 地方品種として酸茎(すぐき)菜(京 都)、野沢菜(長野)など根部の小さい、いわゆる蕪菜(かぶな)がある。

 ○カブ(蕪)は、世界中で栽培されているが、アフガニスタン原産のアジア 系と、中近東から地中海原産のヨーロッパ系とがある。 京野菜など西日本で 見られる中国伝来のアジア系とともに、東日本でヨーロッパ系(野沢菜など関 連の変種も含む)が在来種として確認され、シベリア経由と見られている。 品 種を東西に分ける線は、関ヶ原付近に引くことが出来、農事関係者は「かぶら ライン」と呼んでいる(中尾佐助による命名)。

 ○この「かぶらライン」から私が思い出したのは、地質学者のナウマンが命 名した「フォッサマグナ・糸魚川静岡構造線」と、バカ・アホ分布図の話だ。  ABC朝日放送の「探偵!ナイトスクープ」という番組で、東京出身の奥さんが 「バカ」、関西出身の旦那が「アホ」と言うので、喧嘩になったのが端緒となっ てバカ・アホ分布図が調査された。 京都を中心にした同心円状に「アホ」の 地域があり、東日本のほか、西日本の九州など外側もまた「バカ」の地域にな っているとか、さらに「アホ」と「タワケ」の境界線が関ヶ原付近にあるとか いうことで、松本修著『全国アホバカ分布考』という本もある。

 ○(ついでに。谷謙二さんの12月27日のツイッターhttps://twitter.com/ktgis で知った。数値地図25000(地名・公共施設)で地名に「谷」と「沢」のつく ものをドットしてみると、渓谷の呼び方は西日本では「谷」、東日本では「沢」 が一般的で、北アルプスの稜線できれいに分かれる。その図を見ることができ る。「福沢」のルーツは東日本にあるといい、私は「奥沢」に住んでいる。)

 ○よい蕪の見分け方。 白い肌がつやつやとして張りがあり、形にゆがみが なく、ひげ根の少ないものが良品。葉は、緑が鮮やかで、みずみずしいものを 選ぶ。茎は、しっかりした張りがあり、茎のつけ根が太いものがよい。

 ○「カブ」の語源は諸説あり、頭を意味する「かぶり」、根を意味する「株」、 または「カブラ」の女房詞である「オカブ」からとされている。

 ○江戸時代には漢語で蕪菁(ぶせい)、蔓菁(まんせい)、扁蘿蔔(へんらふ く)などと呼ばれていた。 漢和辞典で「蕪」を見ると、[一](1)あれる。 雑草がおいしげって荒れる。(2)雑草。(3)くさはら。荒れ地。(4)のがれる。 [二](1)しげる。豊か。(2)みだれる(乱)。みだれ。乱雑。/[日本語特 有の意味]かぶら。かぶ。/[解字]草冠に、無はおおいかくすの意味。草が おおうほどにあれるの意味を表す。

○すると与謝蕪村が、「蕪村」と号したのは、荒れた村と意だろうか(これは 調べられなかった)。 蕪村には<名物や蕪菁の中の天王寺>の句がある。 天 王寺かぶは、西日本で利用される代表的な中型種。 この「蕪菁」は、「ぶせい」 と読んだか「かぶら」と読んだかも、わからない。 「蕪菁」から、「蕪」の[日 本語特有の意味]かぶら。かぶ。が出てきたのか、そのへんもご存知の方がい らっしゃったらご教示願いたい。

「蕪」と「ちゃんちゃんこ」の句会2017/12/30 06:34

 12月14日は、『夏潮』渋谷句会だった。 主宰がご病気で入院されたため欠 席、後選(あとせん)を頂くことになった。 兼題は「蕪(かぶら)」と「ちゃ んちゃんこ」、私はつぎの七句を出した。

極月の気の急く夜に蕪汁

京に来て千枚漬を矢張り買ふ

つるつるに艶めく蕪つい買つて

ちゃんちゃんこ明治の刀自の背筋かな

ちゃんちゃんこ祖母はハモニカ買つてくれ

天井をねずみが走るちゃんちゃんこ

ちゃんちゃんこめんこ駆けっこ鬼ごっこ

 私が選句したのは、つぎの七句。

山の水ひきて蕪を洗ひをる        盛夫

老い知らぬ祖母の手捌き蕪鮨       真智子

葉を添へて蕪の浅漬けお茶請けに     真智子

莨の火こぼせし穴やちゃんちゃんこ    さえ

ちゃんちゃんこ来て釣堀の客一人     盛夫

ちゃんちゃんこ働き者の手と言はれ    裕子

ちゃんちゃんこ泣いていたのにもう笑顔  庸夫

 私の結果は、<ちゃんちゃんこめんこ駆けっこ鬼ごっこ>を庸夫さん、正紀 さん、ななさん、真智子さんが、<天井をねずみが走るちゃんちゃんこ>を裕 子さんが採ってくれて、互選5票だった。 主宰の後選にはなく、トホホの歳 末となった。