桂吉坊の「幸助餅」後半2026/09/07 06:54

 雷は、どこにいるんです。 ここにおりますわい。 お久し振りやな。 話は聞いてましたか。 そのお金、返してくれませんか、今日は拝みます。 (雷は)一文も返すわけにはいきません。 こっちは芸人、そちら様はご贔屓様、下げた頭が承知しない。 諦めてもらいましょう。 本気で言っているのか、雷は性根がきれいだと思って、贔屓していた。 贔屓などと言ってくれるな(と、幸助を突き飛ばす)。 ついた餅が、尻もちじゃ、アッハッハ! 帰るぞ、夕立、暗闇、ついて来い。 (お咲は、)しょうがない、帰りましょ。 お咲、すまん。 くやしい、と長屋へ。

 お咲は、新町の三つ扇屋の女将から、もういっぺん三十両借りた。 これは、お咲さんに貸すんだ、と。 それから、この夫婦の働いたの、働いたの、くるくると働いた。 担ぎの餅屋から始めて、客もだんだん戻ってきた。 幸助餅の暖簾を掲げ、三年の年季も待たずに、お袖も帰って来た。

 福田屋さんから、餅一式の注文だ、忙しくなるぞ。 ごめんなはれ、餅を売って下せえ。 (雷)妙なところで会いましたね。 どちらさんで? 五郎吉、ゴロツキに、金を使い、相撲の太鼓を聞くのも嫌だ。 餅屋は餅屋、餅を売ってくれ、商売だろ。 何の餅? 水餅を一つ買うてやる。 よう味わうて、食うてくれ、銭はもらえない。 大関の名が廃る、三十両で買うてやろう。 旦那様、以前、大阪に戻った時……、お受け取り下さいませ。 旦那様、よう御辛抱なされました。 帰れ!

 そのお金、ぶつけるようでは、罰が当たります(と、三つ扇屋の女将)。 二度目におかみさんにお貸ししたお金、雷関が持ってきたんです。 心にもない嘘を言ったと、大きな体で涙を流して、言うた。 一日も早く、旦那様に返してもらいたい、と。 自分が持ってきたことは、言うてくれるな、と。 幸助さんご夫婦が働いて働いて……、その商売も、雷関が頭を下げて回ってくれた。 相撲取が、注文取りをした。

 そうだったのか、帰れなどと言うてしまった、これからもよろしく頼む。 こちらこそ、よろしうお願いします。 お互いの、詫びがかなった。 雷がとっさに、言う。 身代ふくれる筈だ、餅屋の主(あるじ)だもの。