「朗読の世界」で藤沢周平を聴く ― 2026/02/18 07:24
「等々力短信」第1132号(2020.6.25.)に「『二十四の瞳』の朗読を聴く」というのを書いていた。 コロナ禍でのStay Home中、パソコン、スマホで聴くNHK「らじる・らじる」の朗読で壺井栄の『二十四の瞳』を聴いた話だった。 最近「らじる・らじる」では、もっぱら寝る前に、ニュースを聴いていた。 それが、たまたま「朗読」を選んだら、藤沢周平をやっていた。 NHK FMの「朗読の世界」という番組が、月曜から金曜の夜9時15分から15分間放送されている。 1月5日から、藤沢周平の短編を、俳優の中原丈雄が読んでいる。
最初に聴いたのは、新潮文庫『霧の朝』に収められている「密告」だった。 八丁堀の同心や、浅草三間町の小料理屋、こんにゃく島(霊岩橋際埋立地、非公認の遊女街があった)が出てくる、江戸の話である。
定回り同心の笠戸孫十郎は、受持ちの町筋と自身番を回って、仕事の終りを浅草三間町の近くに持って行き、小料理屋「卯の花」に寄って、お茶を飲んで帰ることがある。 一杯やって帰りたい気分がすると気もあるが、それは我慢する。 着流しに雪駄履き、銀杏髷と、ひと眼で八丁堀の人間と解る格好で、酒の香をさせて町を帰るのは憚られる。
「卯の花」は、伊勢蔵夫婦がやっている。 伊勢蔵は、一方では十手捕縄を預かる岡っ引である。 若いときに孫十郎の父笠戸倉右衛門から手札をもらい、倉右衛門が死没したとき、後を継いだ孫十郎から手札をもらい直した。
店を出ると、伊勢蔵が追いかけて来て、言伝てがある、父が使っていた磯六という男が店に来たと言う。 磯六は、密告者で、法に触れているが、ある事情から表沙汰にならなかった事件、法に触れる寸前で止んだ事件、やがて事件になりそうな犯罪の芽を拾い集めてくる異常な能力を持っていた。 深夜、父のところに来て、ひそひそ話をして、金をもらう姿を何度か見ていた。 父が死に、二十三で後を継いだ直後、仕事の中味が解った孫十郎は、磯六とのつながりを切って、出入りを禁じた。 言伝ては、明日の夜五ツ半(九時)に八丁堀のお家にお邪魔したい、何か内密の話がある、ということだった。
孫十郎が八丁堀に帰ると、妻の保乃が迎えた。 保乃は、三日前の夕方、こんにゃく島に買い物に行った帰りに、災難に逢った。 材木屋の前を通りかかったとき、店の脇に立て掛けてあった柱材が倒れかかって、とっさに逃げたが左足を打たれて、踵(かかと)が腫れ上がった。 気がつくのが一瞬遅れたら大怪我をするところだった。 材木屋の若い者に送られて帰って、次の日一日寝込んだ。 材木屋では恐縮して、翌日番頭が菓子折を持って詫びにきたが、一日寝ただけでどうにか歩けるようになっている。
磯六は、何を言いに来るのか? それは、また明日。
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