扇遊の「夏の医者」2009/09/02 07:07

 扇遊は前座の時、二度ほど円生と旅(興行)を一緒にしたという。 扇橋や 紙切りの正楽(先代)もいた。 蕎麦屋に入って、円生はカツ丼を注文した。  しっかりしたものを食べるんだ、と思った。 会話はなかった。 円生は半分 食べて、残りを扇遊にくれ、「セコでげす」と。 貴重な体験だ、と扇遊。  円生が亡くなった日に、パンダも死んで、翌日の新聞はパンダの方を大きく 扱った。 「くやしかった」と、扇遊は言った。

 「夏の医者」は、「ピノキオ」風のSFっぽい噺だ。 暑い夏の盛り、無医村 カシマ村のタゼエモンが倒れて、息子が隣村の一本松にゲンパクロウという医 者を迎えに行く。 山を回ると六里、越えると四里半。 真竹の皮でつくった 「ばっちょう笠」をかぶった医者が、草むしりを済ますのを待って、薬籠を提 げ、二人で山を越える。 山頂で一服、極楽の余り風だなどと言っていると、 突然、暗くなる。 生暖かくて、青臭い。 医者が、ウワバミに呑まれたと気 付き、薬籠の下剤ダイオウの粉を撒く。 光る丸い小さな穴が見え、二人は溶 ける前に下されて、全身青臭くはなったものの助かる。 タゼエモンを診て、 チシャ(今風に言えばレタス)の胡麻よごしの食べ過ぎの、ものあたりだと診 断するが、薬籠をウワバミの腹の中に忘れて来ていた。 気丈な医者は、もう 一度、ウワバミに呑まれに行く。 ウワバミは、大木にひっかかった形で、げ んなりしていた。 医者が事情を話して、交渉するが、ウワバミは「もうダメ だよ、夏の医者は、腹に障る」