従業員主権から株主主権へ2010/11/14 07:24

 1980年代になって欧米ではレーガン、サッチャーの新自由主義の政策が行わ れ、国有企業の民営化、政府規制の緩和などは、日本の行財政改革(JR、NTT ほか)に及び、その流れは小泉改革へと進んだ。 民間と政府の両方で、日本 の経営の常識が変った。 持株会社の解禁、執行役員制、金融危機によるリス トラ、ハゲタカ・ファンド。 その背景と原因の一つに、留学先の変更があっ たと、ドーアさんは言う。 第一次大戦後は、ヨーロッパ、ほとんどドイツだ った。 戦争直後、マルクス経済学が支配的だったのは、その為による。 戦 後は、アメリカのビジネススクールへの留学が主流になった。 その世代が会 社で取締役や部長になり、官庁で局長になったのが、この時期だった。 株主 のために利益の最大化を目指し、「従業員主権から株主主権へ」の転換である。

 所得分配に変化が生まれ、格差が拡大した。 所得の格差は、文化的格差も 生じた。 会話、テレビ、新聞、子供の教育(11歳以後、まったく別の世界に なる)などが異なる。 かつて、1960年代の企業では階級差を意識しなかった と、ドーアさんは神戸製鋼でのQCサークルの発表会で現場の人が上がってい たのに、あとで工場長が優しい声をかけていた、従業員と工場長との親密な関 係があったと話した。 それが今は、かつてのイギリスのような階級社会にな りつつあり、同じ日本人だという連帯意識もなくなってきた。 経済効率や自 己の利益しか考えないほうがいいぞ、という思想が強くなったのは残念だ、と ドーアさんは言う。

 ドイツは日本と似ていた。 しかし株主主権は、法律で制限しており、取締 役の半分が株主代表、半分が従業員代表になっている。 日本の法律はアメリ カ式になっていて、従業員の尊重は慣習だけによるものであった。

《増加率》  1986~89 2001~04 2005~08

役員・給与賞与   21    59     13

従業員・給与    14    -5    -23

  配当         6    70      8