三遊亭花金の「王子の狐」2025/01/18 07:08

 15日は、第679回の落語研究会、笑遊門下「はなきん」と名乗り、あけましておめでとうございます、と新年最初の会の開口一番だから、きちんと挨拶した。 こげ茶の着物に、黒の羽織。 二ッ目、早稲田のオチケン出身だそうだ。 ○や×、10点満点でいくつなどと、メモなさらないように、と。

 ある男、稻むらで狐が頭に葉っぱをのせ、十七、八の綺麗な娘さんに化けるのを見た。 まわりには誰もいないので、私が見込まれたかと思ったが、玉ちゃんじゃないですか、と声をかける。 お兄ィさん、久しぶり、友達とはぐれて、困っているの。 家まで送るよ、お父っつあんとおっ母さんは元気? 料理屋の扇屋さんにちょっと寄ろうと思うんだ、玉ちゃん、つきあってくれるかな、終わりが先になるけれど。

 二階、空いてるか。 お銚子を四、五本と、玉ちゃん好きな料理は? 油揚げ。 揚げるものがいいか、天婦羅を二人前。 私はお刺身を。 しばらくぶりだね、。 お酌はいらないよ、こっちに綺麗なひとがいるんだから。 玉ちゃん、飲めるの知ってるよ、(小声で)御神酒が上がってるから。 玉ちゃん、お酌をしてくれるのかい。 (小声で)馬の小便じゃないだろうな。 玉ちゃんも、どんどんやって下さい。 いい人、いるんじゃないの? いない。 おじさんに任せて、毛並みのいい……、人柄のいい人を探してあげるから。 ほんのり、狐色……、桜色になったね。 お兄ィさん、酔いました、眠くなってきて。 そこに横になるといい、床の間に紙を敷いて頭をのせて。 狐は、クーーッと、寝息を立てて、寝てしまう。

 トントントンと、階段を下りて。 お帰りですか? この先のおじさんの所へ行くんで、手土産に玉子焼を三人前、財布は連れに預けてあるから。 余り長く起きて来なければ、起こして下さい。  お清、お客様を起こしてきなさい。 もし、お客様。 アッ、はい、寝込んでしまって、連れは? お帰りになりました、お土産の玉子焼を三人前持って、お勘定はあなたからいただくように、と。 エッと、驚いたとたんに、耳がピョンと立って、尾っぽが出たから、お清が驚いた。 階段を、ダ、ダダ、ダーーンと、落っこちた。 狐です! シッポを出しました、足でなく…、本当の狐! 夫婦(めおと)で来たんだね、雄狐は不細工だったけれど。 取っ捕まえなきゃ、と追い回すと、狐もイタチの仲間とみえて、最後っ屁を一発ひって、ケーーンと逃げた。

 只今、戻りました。 旦那様、お帰りなさい。 実は、狐がこれこれで。 お前たち、お狐様を追い回して、ぶったりしたのか? ここはどこだと思っているんだ、王子だよ、われわれはお狐様のおかげで商売しているんじゃないか、それをぶったりしたのか、祟(たた)りが大変だ、今日は早仕舞いにして、みんなでお詫びのお参りに行こう。

  男は、ありがたいと、おじさんの家へ。 こんばんは! ご機嫌だな。 これお土産です。扇屋の玉子焼か、豪儀なもんだな。 こんな訳で。 冗談じゃない、受け取れないよ、狐をだますなんて、祟るぞ、今頃、家じゃあ、おかみさんがすっ裸で踊っているだろう。

 おじさんにそう言われて、お詫びに行く。 可愛らしい子狐ですね。 奥の穴で、うなり声がする。 おっかさんが、悪い人間に騙されたって…、寝ている。 これ、お詫びの品です。 くわえこんで行ったよ。 身体が痛む、なに訪ねてきた、人間なんて、執念深いものだ。 坊のこと可愛いと褒めてくれて、お詫びの品だと、美味しそうな牡丹餅をくれた。 食べるんじゃない、馬の糞かも知れないよ。