「新・ジャポニスム 西洋を変えた“美の波”」団扇絵2025/07/25 07:11

 『日曜美術館』7月6日放送の「新・ジャポニスム 西洋を変えた“美の波”」が興味深かった。 美術史研究の第一人者という三浦篤大原美術館館長と国立西洋美術館前館長の馬渕明子さんの対談だった。 私は、馬渕さんを知らなかったが、モネやクリムト、工芸や演劇からジャポニスムを研究したそうだ。

 従来、浮世絵がヨーロッパにもたらされたのは、輸出された茶箱に包装用に使われていたからだという話は聞いていた。 この番組では、団扇絵に注目していた。 1867(慶応3)年、日本のパリ万博出展を機にヨーロッパで日本美術の大流行が起き、安価な団扇絵が1年に80万本輸出されるなど、ブームは画家たちはもちろん、一般人にも広がった。

 フランスのコレクター、ジョルジュ・レスコヴィッチさんは、広重の作品を始め130点の団扇絵をコレクションしている。 団扇という日用品に、高い芸術性を込めていて、偉大な芸術家が手がけている。 遠近法でなく、平面的な画像が、まるで3Dのように重なっている。 大胆な画面の配置、デザインも素晴らしい。 フランス人は、団扇を壁に飾っていた。

 クロード・モネに《ラ・ジャポネーズ》という着物を着た妻をモデルにした作品がある。 妻は金髪で、身体をねじって扇子を広げ、赤い着物の上半身には紅葉が、裾に向って黒く刀を二本差した武者が描かれ、壁にはたくさんの団扇が飾られている。

 エドワール・マネにも、団扇を部屋に飾っている作品がある。 ルネッサンスから500年後、非常に確固たる世界を、ちょうど、画家たちが崩そうとしていた時期に、団扇などの浮世絵が役立った。 浮世絵は、自由がいい、大胆がいい。 芸術の民主化、日常の生活のなかに美術を取り込んでいる。 馬渕さんは、別の文化を吸収するエネルギーは、西洋文化の力でもある、と言った。 三浦さんは、フランスの研究者に、日本のデパートの包装の仕方などの文化(マイナー・アート)を指摘されたという。

等々力短信 第1193号は…2025/07/25 20:40

<等々力短信 第1193号 2025(令和7).7.25.>戻ってきた権太楼の「代書屋」 は、7月22日にアップしました。 7月22日をご覧ください。