「真打になりたいなら、芸者みの吉と別れろ」2025/09/26 07:03

 テレビドラマ『昭和元禄落語心中』の第4話「破門」。 テレビが放送を開始した翌年の昭和29年、去年の助六につづいて、菊比古は二ツ目新人賞を取る。 師匠の七代目有楽亭八雲は、行儀、身なり、誰もがそろそろ真打だと言っている、廓噺でねえ噺もやったらどうだ、真打、昇進だ、と言う。

 助六は師匠に、俺への借金はどうしてくれる、と言われる。 居酒屋で、木村彦兵衛(柳家喬太郎)が落語をやると、呼びこんでいた。 彦兵衛は、酒を飲んで寝ていて寄席を休み、高座で客と喧嘩して、去年協会を除名になっていた。 助六は、その「死神」を聴き、師匠、勉強させていただきました、私にどうしても教えて下さい、と頼む。 彦兵衛は、酒がねえと駄目なんだ、怖えんだよ、思い出すのだ地獄をさ、戦争で本物の死神を見た、人が人でなくなる、何の恨みもない人を、幾人も殺した。 殻を破りたいんです。 そこへ座れ。 教えてやろう。 首を出す、かっこうだ。 それじゃあ、若い。 「消えるぞ。 消えるぞ。 ほーーら、消えた!」 ん、まあ、そんなもんだろう。

 師匠の八雲は菊比古に言う。 気を付けろよ、実力だけじゃあ真打になれねえ、席亭や協会のお偉方の覚えがめでたくなきゃあ、助六にも、それ言っとけ。 稽古の噺を聴き、いい出来だ、大した二ツ目だ、「納涼落語会」のトリで、その噺かけてみるかい。 真打になりたいなら、みの吉と別れろ。 落語を続けたかったら、あの女と別れろ。 師匠は、知っていたのだ。

 寄席で「死神」をかけた助六、スタンディングオベーションを受ける。

 日之出荘の菊比古達の部屋に、みの吉が来て、銀座の百貨店で買ったという頑丈な英国製の杖を渡し、今まで使っていた杖と交換してくれ、私を身請けしたい人がいる、と言う。 どうするんだい、まさか俺に止めてくれとでも言うのかい。 師匠に言われたんだ、真打になりたいなら、別れろって。 みの吉が部屋を出て、陰で聞いていた助六が追う。 みの吉は助六に、あんたみたいに優しい人はいない、満州はどん底だった、男に騙されて…。 助六が、みの吉を抱く。 そこへ菊比古、「悪かったねえ、変なところに来ちゃって」。 みの吉は、去る。 助六は、「バカ、お前さんが追って行きな、一世一代の大嘘だ」。 菊比古、「私が決めたんだ、そんな野郎が追いかけたら、酷だよ」。