桂二葉の「仔猫」上 ― 2025/09/30 07:05
唄の入る出囃子「いっさいいっさいもん」で出た、桂二葉は、紫の着物、白い帯。 落語研究会は、何度かと言ったけれど、実は三回目(2023.8.21. 第662回「天狗刺し」、2024.9.5. 第675回「向う付け」、2025.4.16. 第682回「がまの油」は休演で、同じ出囃子の入船亭扇橋が代演した)。 その4月の休演を謝った方がよかったと思うけれど、675回で権太楼師と一緒になって、すれ違った時、「遊んでね」と言われた、楽しんでのエールだと思ったが、私と遊園地でも行きたいのかとも、と始めた。
船場のさるご大家、夕暮れ時、田舎から出てきた女子(おなご)、ちょっくら、お尋ねします、横町(よこまち)の人置屋、口入屋から来たが、行き方がわからぬ。 書付がある。 ここに、ウチとこと、書いてある。 おぬしとこか。 もっちゃりしとる女衆(おなごし)だな。 ウチとこも、女衆を頼んでおったのだが、実は、他の口が決まった。 帰れって、言うか、ワシは収まらんで。 帰れって、言われても、口入屋のある所がわからん、誰ぞ口入屋まで送って行ってくれ。 定吉っとん、この女衆を口入屋まで送ってやって。 こんな小まげなのはいかん、そこの大きいのん、五、六人で送ってんか。
表が騒がしい。 女衆が? 女衆のことなら、店でなく、こっちに入んなはれ。 ご寮ンさんですか、わたしお鍋と申しますで、何分よろしくおたの申します。 他に頼んである口もあるけれど、ウチはこうして人がぎょうさんいるさかい、女衆の一人や半分増えたかてかめへん。 でもウチは給金が安いで、半季で一両だけど、あんたかめへんか。 はーい、ご寮ンさん、わたし給金欲しさの奉公ではございません、おらの村のドンドロ坂に茂左衛門というのがおって、その息子に茂吉というのがおるが、おぬし知っとるか? あんたと初めて会うのに、そんな人わかるかいな。 その茂吉が、「これお鍋、われがような者が大阪で三日でも奉公が勤まったら、立てた柱に花咲かす」と、こきおった。 わしゃ三日はおろか一年が三年でも五年が十年でも奉公ぶって、立てた柱に花咲かしてもらうのを楽しみに思っとるで、給金は一両が二両、五十両が百両でもかまやせん。 誰がそんなにぎょうさん出せますかいな、まあそれが承知なら、いてみなはれ。
このお鍋、見かけによらぬ働き者で、気が利く。 仕事を探して、働く。 上から下まで、襟垢のついたものがなくなった。 ある日、早く片付けが終わったのだが、お鍋が手伝ったからで、えらい力、化け物みたいだ、と。 見かけによらぬ、いい女子(おなご)、汚れた足袋を捨てようとすると、勿体無いまだ履けるじゃと、きれいに洗って、繕ってくれた。 情があって、親切、やることがきれい、言葉は汚いけれど…。 汚れたふんどしを、押入れに隠しておいたら、これじゃろうと、きれいに洗って出した。 そこで、横町のボテ屋の女衆とウチのお鍋、嫁はんにするとしたら、どっちにする? という話になった。 ボテ屋の女衆は、町内一の別嬪や、ウチのお鍋とくらべたら、殺生や。 わしゃウチのお鍋にするな。 お前、えらい茶人やな。 ボテ屋の女衆は、塗りの重箱、縮緬の風呂敷、開けてみたらしょうもない、食うても旨まない。 ウチのお鍋は、欠けたすり鉢、鍋のふた、ふたにほこり一つついてない、ふたを開ければ、ご馳走や。
小人閑居日記 2025年9月 INDEX ― 2025/09/30 07:16
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