「わたしが一番きれいだったとき」2026/06/10 07:08

茨木のり子は、1926(大正15)年6月12日生まれだから、年齢が昭和と同じになる。 (1867年1月5日生まれの夏目漱石が、明治と同じ年齢なのと同じである。) つまり、昭和20(1945)年、敗戦の年に20歳だったことが、茨木のり子に決定的な影響を与えた。 世の中が引っくり返るのを、20歳で身をもって体験したのである。

 角川文庫『現代詩人全集』第十巻「戦後Ⅱ」に、「わたしが一番きれいだったとき」という詩がある。 冒頭に「わたしが一番きれいだったとき」を据えた、七つの連がある。

わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていってとんでもないところから
青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはお洒落のきっかけを落してしまった         (二連略)

わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた         (一連略)

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのように


 1926(大正15・昭和元(12月25日改元))年生まれに、どんな人がいたか。 マリリン・モンローは、茨木のり子より11日前、6月1日に生れていた。 エリザベス二世は4月21日。 森英恵、三浦朱門、立原正秋、津島恵子、安野光雅、菅原謙次、宮尾登美子、井上光晴、小川宏、渡邊恒雄、石井ふく子、星新一、山口瞳、今村昌平、宮脇俊三、佐田啓二。